2008年5月31日土曜日

暖かな破局:第4部・削減フロンティア/3 トヨタの発案、日中合意に

(毎日 5月22日)

京都議定書で、温室効果ガスの削減義務を負わない中国。
どうすれば削減に向かわせられるのか?

「中国で研究しませんか」。
トヨタ自動車でバイオ燃料開発などを担当する
BRエネルギー調査企画室が06年、経済産業省所管の
「地球環境産業技術研究機構」(RITE)にこうもちかけた。

テーマは、石炭火力発電所から回収した二酸化炭素(CO2)を
油田に封入する「炭素回収・貯留」(CCS)。
高成長が続く中国のエネルギー問題を懸念したため。

中国の07年の自動車販売台数は、約850万台で日本の1・6倍。
トヨタにとっても巨大市場。
しかし、CO2排出も急増。
05年は、世界の2割近い約50億トンを排出。

安価だがCO2排出量の多い石炭に、1次エネルギーの6割を頼っている。
石油や天然ガス発電を増やせば、
原油価格の更なる高騰に火が付きかねない。
利益率の高い大型車が売れず、トヨタの収益減が懸念される。
「CCSなら、CO2削減と原油増産を両立できそうだ」(トヨタ関係者)。

トヨタは約3000万円を拠出し、適地探しや採算性調査をRITEに委託。
昨年末「黒竜江省の大慶油田なら、事業化可能」との結論。
1トンのCO2回収に60ドルかかるが、0・3トン封入すれば
原油1バレル(約159リットル)の増産が見込める。
封入コストなどを抑えれば採算がとれそうで、
京都議定書のクリーン開発メカニズム(CDM)事業に認定されれば、
封入分を日本の削減分に算入することも可能。

「日中首脳会談に花を添える」。経産省が飛びついた。
中国側も「増産になるなら」と受け入れ、
5月の日中共同声明に急きょ盛り込まれた。
「環境やエネルギーは商品価値の一部だ」。
決算会見で、渡辺捷昭社長はこう強調。
------------------------------
「遼寧省で、出力10万キロワットの発電所を爆破した。
8カ月で253基目だが、中国の省エネ・排出削減の始まりに過ぎない」。
日中両政府が、北京で開いた省エネルギーフォーラム。
曽培炎・中国副首相(当時)のあいさつに、
約500人の日本側出席者は息をのんだ。

中国各地で、石炭火力発電所の爆破が相次ぐ。
効率の悪い発電所5000万キロワット分を、
10年までに廃止することを決めたため。

省エネは中国の経済成長に必須で、
政府は国内総生産(GDP)当たりのエネルギー消費を
10年までに20%削減する計画。
発電所爆破はその一環で、
省エネ達成率は地方政府や企業の人事考課に直結。
100%なら40点、50%なら20点といった具合に点数化。
----------------------------
「想像以上だ。ありがとう」。
雲南省安寧の昆明鉄鋼でボイラーの効率を示すモニターを見ていた
技術者は、日立製作所の社員に笑顔を見せた。
日立は同省の省エネ事業を請け負い、
ボイラーに空気を送り込むファンの消費電力を20%以上削減。
日立は、中国で省エネ技術の販路拡大を狙う。

日中は、「戦略的互恵関係の包括的推進」で合意したが、
温暖化対策にも、先進国と途上国の互恵関係が必要。

http://mainichi.jp/life/ecology/news/20080522ddm002040095000c.html

0 件のコメント: