2008年10月23日木曜日

脳の損傷で失われた視覚も回復

(サイエンスポータル 2008年10月16日)

視覚野と呼ばれる脳の損傷で失われた視覚機能が、
リハビリで回復することを、自然科学研究機構・生理学研究所の
研究チームがサルを使った実験で確かめた。

大脳皮質障害による「視覚欠損」と診断されてあきらめていた患者も、
トレーニングによって視覚機能を回復させる可能性があることを
示した成果として注目。

生理学研究所の伊佐正・教授と吉田正俊・助教は、
脳の後頭葉にあって目の網膜からの情報が集まる視覚野に注目し、
片方の視覚野を損傷させたサルを使って、
視覚障害とその回復の可能性を調べた。

サルは、損傷した視覚野によって片側の視野が見えなくなる状態となるが、
光の点を示すトレーニングを続けた結果、
徐々に光の方向を感じ取ることができるようになった。

正常の視覚を持つ場合の、光の位置を突き止める眼球の動きと異なり、
直線的な眼球の動きしかできない
(正確な位置を確実・効率的にとらえにくい)ことも分かった。
これは、損傷した視覚野とは別の脳の部位が、
視覚野の機能を代替していることを意味。

サルが視覚機能を回復するのに数カ月を要したことから、
粘り強いトレーニングが必要だが、大脳皮質障害により視覚欠損になった
患者も機能回復が期待できる。
その際、目の動きをモニタリングすることが、
リハビリテーションの効果や回復の判定に役立つ、と伊佐教授らは言っている。

この研究成果は、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業チーム型
研究(CREST)の一環として得られた。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0810/0810161.html

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