2008年10月19日日曜日

スポーツ21世紀:新しい波/279 ビデオ判定/2

(毎日 10月11日)

序盤から優勢だった試合は、誤審と疑われた判定で、
王座陥落の危機へと一変した。

今年1月の世界ボクシング評議会(WBC)バンタム級タイトルマッチ。
チャンピオンの長谷川穂積(27)は、試合中に右目の上を切って出血。
テレビの再生映像は、イタリア選手の頭突き(バッティング)を
明確に伝えたが、レフェリーの裁定では「パンチによるカット」。

出血は徐々に悪化し、試合続行不可能となれば、長谷川はTKO負け。
結局、判定勝ちを収めたものの、ビデオ判定の必要性を
改めて印象づける契機になった。
WBCは6月から、バッティングかどうかの判断について、
ビデオ判定を試験的に導入。
ラウンド間などに映像のリプレーで確認。

技術の多様化と高速化が進むボクシングで、
レフェリーへの負担は年々増え、一人で対処するのは難しくなった。
スロー再生など映像技術の高度化を背景に、
見る側の目も厳しさを増している。
日本ボクシングコミッション(JBC)事務局長の安河内剛さん(47)は、
「昔は(誤審も含めた)人間臭さを許してきたんだけど……。
ファンは公平性、透明性を強く求めるようになった」と時代の変化を感じている。

近年、世界的にジャッジへの不信感が強まり、
WBCは06年11月、四、八回の終了後に採点の途中経過の公開を始めた。
ビデオ判定も含め、正確さが問われる風潮への対応。

ラグビー・トップリーグは昨季から、レフェリーがプレーを止めたときに
時計をストップさせるタイムキーパー制を採用。
数々のドラマを生んだ「ロスタイム」は消え、試合時間は、
レフェリーの時計と連動して電光掲示板などに明確に表示。
今季からは、国際基準に合わせるなどの理由で、
一部の試合でトライの認定にかかわるシーンでのビデオ判定を導入。

ビデオ判定は、ジャッジに説得力を持たせる手段でもある。
あいまいさを許容しない欲求が、観客と競技のかかわり方さえ変えている。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

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