2008年10月19日日曜日

インタビュー・環境戦略を語る:東京海上日動火災保険・隅修三社長

(毎日 10月13日)

地球温暖化に伴う環境の激変は、台風や豪雨などの自然災害の
保険業務を取り扱う損害保険会社にとっても重大な問題。
国内トップの東京海上日動火災保険は、
99年から東南アジアなどでマングローブ植林活動を続けている。
隅修三社長に取り組みを聞いた。

-マングローブ植林活動を始めるきっかけは?

◆99年に会社創立120周年を記念して、社員からアイデアを募ったところ、
1000ほどのアイデアが寄せられた。
世界で活動する企業として、地球環境保護のために植林をすることに。
年1~2回、社員や代理店の職員とその家族からボランティアを募り、
タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、ミャンマー、フィジーの6カ国で
現地の人々と植林。

-2月にタイを訪れたが、植林を通してどんなことが見えたか?

◆植林する海岸線は、エビの養殖のために伐採して荒れていた。
植林すると、地元の人たちの環境に対する認識が高まり、
経済の活性化にもつながる。
子供たちの素直で明るい笑顔には、心洗われた。
昔の日本にあった風景。

-社員の意識にも変化があるか?

◆ボランティア旅行は、基本的に自費だが、参加希望者が列をなす。
参加者は帰国後、さらに意識が高まり、小学校で子供たちに
植林の模様を伝える講師などもしている。

-07年に発表した会社の環境戦略のコンセプトは?

◆これまで社内で個別に取り組んできた対策を、系統立ててまとめた。
災害リスクを保険商品に組み込んで販売している我々にとって、
気候変動のリスクを減らすことは最大のテーマで、
東京大学や名古屋大学などと共同研究。

-保険の契約書に当たる約款を発行せず、インターネット上で閲覧する
「ウェブ約款」はユニーク。

◆保険は、商品が複雑なこともあり、説明に大量の紙を使う。
約款を、インターネットで閲覧してもらうようにした。
来年から、「紙は不要」と申し出てもらうと、マングローブを2本植林。
二重、三重に、温暖化防止の効果が生まれる。

-今後の環境問題への取り組みは?

植林活動は、100年続けることを目指す。
10年継続すると、植林面積は5300ヘクタールと大きなスケールになり、
年間3万トンの温室効果ガスを吸収。
あと2年もすれば、東京海上グループで年間に排出する7万トンを吸収。
子供、孫の時代に、どれだけいい環境を残せるかは重大な責務で、
地道な活動で貢献したい。
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◇すみ・しゅうぞう

早稲田大理工卒、70年東京海上火災保険(現・東京海上日動火災保険)入社。
07年社長、ミレア(現・東京海上)ホールディングスの社長も兼務。
山口県出身。61歳。

http://mainichi.jp/select/science/news/20081013ddm008020021000c.html

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