2008年10月20日月曜日

太陽光、次代照らす〈環境元年 太陽ウオーズ1〉

(朝日 2008年10月6日)

「欧州のフライパン」と称されるほど、スペイン南部の
アンダルシア地方は日差しが強い。乾いた荒れ地を太陽が焦がす。
セビリア郊外に、一辺10メートルの巨大な鏡が624枚並んでいる。
角度を変えて太陽の動きを追い、高さ115メートルの塔に反射光を集める。
光が集中する一点は、まぶしくて直視できない。

総合テクノロジー大手アベンゴアグループが造った「PS10」と呼ばれる
集光型の太陽熱発電所(1万キロワット)。
世界初の商業プラントで昨年、始動。
太陽熱で水を蒸気に変え、タービンを回す。火力発電と同じ仕組み。
担当の技術者フェルナンデス氏は、
「この地域は快晴が多く、年間280日も運転できる」。

すぐ横にある2倍規模のPS20も近く運転を始め、
太陽熱によるさまざまな発電方式の施設を建設し、
12年には8平方キロの敷地に計30万キロワットの総合発電所をつくる。
日本の黒部第四発電所級の大型水力発電所の出力に相当し、
太陽電池のパネルを10万軒の住宅につけた量にあたる。

太陽熱発電は、太陽利用の幅を広げる先端技術。
スペインは、光を電気に換える太陽電池による発電でも急伸し、
世界を驚かせている。

太陽電池の累積導入量は、05年には6万キロワットだったのが、
07年には68万キロワットと増え、今年末には180万キロワット、
全発電量の0.5%ほどになる見通し。

05年にドイツに抜かれて導入量世界2位となった日本では今年、
20万キロワットほどの増加にとどまるとみられ、
スペインでの増え方は日本の約5倍。

スペインは、風力発電が約10%を占める風力大国。
欧州では、風力が拡大して一般的な電源の一つとなる一方、
立地の制約も出てきたため、支援の力点は太陽光に移りつつある。
日差しに恵まれたスペインは、その流れの最前線。

発電での二酸化炭素(CO2)排出量は、太陽電池の場合、
製造過程で出る分を含めても石炭火力の18分の1。
地球温暖化対策として有効なのに加え、原油の高騰もあり、
最近の世界の太陽電池市場は年40%の伸び。
07年の生産量は370万キロワットで、03年の5倍。

日本のトップメーカーであるシャープの浜野稔重副社長は、
「石油が枯渇する時代に、欧州は太陽光発電を『現代の油田』と考えている」。

欧州には、日差しの強い北アフリカ諸国で発電して南欧に電気を送る
「スーパー送電網」計画も。次に狙うのは、「サハラ砂漠の太陽」。

石油にどっぷりつかってきた米国でさえ、
エネルギー省が太陽電池の技術開発支援などに乗り出した。
エネルギー資源の中東依存からの脱却という意味も。
州レベルでも、「100万戸ソーラー・ルーフ計画」(カリフォルニア州)
といった強力な支援策を設ける動きが続く。

欧州の業界団体などの推計では、世界の発電量のうち太陽光は
30年には最大14%を占め、関連産業の市場規模は、
デジタルカメラや携帯電話などデジタル家電全体に匹敵する約70兆円。
市場は爆発前夜にある。

http://www.asahi.com/eco/TKY200810050204.html

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