(2009年11月27日 毎日新聞社)
メタボリックシンドローム対策やダイエット志向の高まりで、
日本人のエネルギー摂取量は年々低下し、
06年にはついに終戦直後を下回った。
「このままでは、長寿社会どころか平均寿命は短くなっていく」
栄養学者からはそんな懸念の声。
人類の平均寿命が50歳を超える国が現れたのは、
20世紀に入ってから。
肉や牛乳などの動物性たんぱく質を多く取るようになった
ニュージーランドやオーストラリア、欧米の先進国が先陣を切った。
この時期の日本は、栄養状態が悪く、30代後半。
半世紀遅れの1947年、ようやく50歳を超えた。
80年代、植物性たんぱく質と動物性たんぱく質の摂取量が
ほぼ同じになり、世界最高レベルの長寿国に。
桜美林大大学院の柴田博教授(老年学)は、
「動物性たんぱく質と脂肪の摂取増が、結核や脳血管死を減少。
80年代、脂肪の摂取量が頭打ちになり、欧米のように
虚血性心疾患の増加も防ぐことができた。
理想的な栄養バランスが、日本の長寿をつくりあげた」
◆20代女性が押し下げ
80年代以降、日本人の栄養状態は年々劣化し始めた。
07年の国民健康・栄養調査によると、エネルギー摂取量は
70年代前半の約2200kcalをピークに、06年は1891kcalに減り、
終戦直後の46年の1903kcalよりも少なくなった。
たんぱく質摂取量は、95年の82gから70g、
脂質も60gから54gに減少。
柴田教授は、「(ダイエットなどに取り組む)若い女性とその子供が
低栄養状態で、全体の平均を下げている。
粗食が健康的との誤解が広がり、食のバランスを壊してしまった。
将来は、骨粗しょう症などが頻発し、平均寿命も低下しかねない」
同調査によると、20代女性のエネルギー摂取量は
約1700kcalで、必要量よりも300kcal不足。
◆ご飯の量で調整を
長寿につながる食生活に向けて、どんな工夫をすればいいのか?
柴田教授に聞いた。
人間の体は、9種類の必須アミノ酸を含む
20種類のアミノ酸でできている。
この構成に近いアミノ酸を取れるように、
食べ物全体の50-60%は動物性たんぱく質をとった方がいい。
必須アミノ酸がすべてそろった食品を100点として、
アミノ酸のバランスをみる「アミノ酸スコア」では、
「卵、牛乳、肉、魚」が100点、大豆80点、米60点、小麦40点。
1日に必要な食品の基本として、
「(1)卵1個、(2)牛乳200cc、(3)肉、魚それぞれ同量(70-90g)、
(4)豆腐3分の1丁、(5)野菜・果物350g、(6)油脂15cc」。
おかずの量を変えることなく、各人の体の大きさや運動量で
ご飯の量を調整してほしい。
高齢になると、肉などのおかずの量を減らした方がいいと
考える人は多いが、これも誤り。
基本のおかずはしっかりとった上で、基礎代謝の減少分だけ、
ご飯の量を減らせばよい。
70代では、1日約110kcal(お茶わん1杯弱)を減らす程度。
◆抗酸化効果でアーモンドに注目
ビタミン類やポリフェノール類、香辛料などに多く含まれ、
人間の老化を防ぐ抗酸化物質。
米国農務省の「ジーン・メイヤー人間栄養学加齢研究センター」
のジェフリー・B・ブラムバーグ所長によると、
米国では最近、アーモンドの抗酸化効果が注目。
「酸化ストレスを遮断するビタミンB、Eやフラボノイドなどの
栄養素と酵素が含まれ、相互作用で効果を発揮する」
1日5~20本のたばこを吸う中国人男性30人に、
1日84g(約70粒)のアーモンドを4週間摂取させたところ、
DNA鎖の切断による損傷が23%減少した。
「木の実、野菜、果物の中には、たくさんの抗酸化物質が含れる。
サプリメントよりは食べ物として取る方がよく、
1+1=2以上の相乗効果がある」
http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/11/27/112077/
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