(読売 5月21日)
新潟市立味方中学校の昼食時間。
ランチルームで、100人余りの全校生徒が、
おのおのの弁当箱を広げる。
ミニトマトに卵焼き、ほうれん草のあえ物など、
色鮮やかなおかずの数々。
この日は、年に8回ある「弁当の日」。
おかずには、冷凍食品はなるべく避ける。
市販の弁当を移し替えるのはご法度。
これらのルールを守りながら、一人ひとりが弁当を作る。
ある男子生徒は、「前日に下ごしらえをして、朝早く起きて揚げた」、
おかずの鶏のから揚げについて解説。
普段は給食の同中で、「弁当の日」が始まったのは昨年度から。
きっかけは、前年度、給食で、うまみ調味料入りの出来合いのだしを
使うのをやめ、カツオ節や昆布、煮干しなどからとるようにしたこと。
しばらくすると、生徒たちから、「給食がまずくなった」との声。
大人はおいしいと感じるのに、なぜ子どもには不評なのか?
当時の校長の小林恵子さん(56)は疑問に思い、
生徒の家庭での食生活を調べてみた。
「朝食は菓子パンとコーヒー」、「夕食は、買ってきた総菜を
チンするだけ」という風景が。
「おばあちゃんの作るおかずを、子どもが『まずい』と言って食べない」
との声も。
「既製食品への依存度が高く、子どもの舌が添加物入りの
料理に慣れていた。
家族も巻き込んで、一から食事を作ることの大切さを痛感した」
「弁当の日」を始めるにあたり、地域住民の協力で、
地元産の野菜を使った料理の作り方などを指導。
それから1年余。
男子生徒も、食材を買いにスーパーに行くようになり、
その際に添加物を確認するようになった。
当初は不評だった本格派の給食を、
おいしく残さず食べる生徒が増えている。
食卓で、子どもが一人さみしく食べる
「孤食」という言葉が出てくる時代。
「弁当の日」の提唱者で、香川県の小学校長だった
2001年に実践を始めた竹下和男さん(61)は、
「弁当を作ることで、親子の会話が増えて良かったという声を
聞くようになった。
食を通して、家族のあり方も見直してもらいたい」
39都道府県の小学校から大学まで、
計585校が取り組む「弁当の日」。
未来の食卓を担う人材育成の礎は、
少しずつ、すそ野を広げている。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100521-OYT8T00223.htm
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