2010年6月5日土曜日

インサイド:男子バスケット界統合へ/5止 「ビジネス」の潜在能力

(毎日 5月22日)

国内初開催となった06年の男子世界選手権は、
約13億円もの赤字を計上。
それまで開催国に与えられていたテレビ放映権や
マーケティング権を、国際バスケットボール連盟に握られ、
警備や通信システムにも多額の費用がかかった。
日本代表は1次リーグ敗退。
その後、大会の財政問題をめぐり、日本協会では内紛も起きた。

「赤字には、当事者として責任を感じている」と
大会組織委員会のマーケティング責任者だった
大手広告代理店・博報堂の小見山一・第18営業局長。

今後のバスケット界を展望する上で唯一、明るい材料が。
チケット収入が予算を上回ったこと。

06年8月26日、決勝ラウンド初日を迎えた、
早朝のさいたまスーパーアリーナ。
開場を待つ観客の長蛇の列。
小見山局長は、「ビジネスとして、十分成立する潜在能力がある。
バスケが、『見るスポーツ』として認知されたのは間違いない」

日本代表が敗退後の決勝ラウンドは、観客動員で苦戦が予想、
ふたを開ければ、売り出した約1万8500席の7割以上が
連日埋まり、最後の3日間は満席。

学習指導要領にも組み込まれ、
「するスポーツ」としてはなじみが深いバスケット。
09年度の競技者登録は、約62万人と広いすそ野を持つ。
競技者登録をせず、サークルなどでプレーする人も多い。
競技をやめた人も含めれば、
「62万人の10倍では済まない市場がある。
なのに、『見るスポーツ』としてはマイナー。
この差を、マーケティングの力で埋められれば、
ビジネスとしては成り立つはず」。小見山局長の実感。

他の球技団体関係者の中には、
「日本でプロ化できるのは、バスケットが最後」という見方。
日本協会には、過去にもプロ化構想を掲げながら、
挫折してきた苦い過去がある。
協会幹部の一人は、
「今回失敗すれば、プロ化は二度とないだろう」

男子日本リーグ(JBL)とbjリーグが、
「次世代型トップリーグ」創設に向けた覚書に調印したとはいえ、
チーム数や運営費の適正規模の見極めなどの議論もこれから。
JBLの企業チームは、年間運営費が4億~5億円、
親会社からの分社化で独立採算となれば、
「(出資する)企業からは明確なリターンを求められる」、
原田宗彦・早大スポーツ科学学術院教授。
要求に見合う価値を示せなければ、
「撤退」という最悪のシナリオも予想。

それでも、すでに地域密着のプロチームが多数存在し、
黒字化に成功しているところも。
リーグが一つになり、互いのファンを取り込めれば、可能性は広がる。

リーグ統合の検討メンバーでもある原田教授は、
「『競技力』と『経営力』は表裏一体。
事業力のないスポーツ団体は、これから淘汰される」、
日本協会のリーダーシップを求める。

協会の木内貴史専務理事は力を込める。
「万が一、親会社の事情で参加しないチームが出てきたとしても、
統合への歩みは止めない」
強い決意の下、出発点が違う二つのリーグの主張をまとめ、
理想像にいかに近づけるかが、成功の鍵を握っている。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/05/22/20100522ddm035050042000c.html

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