(毎日 5月21日)
ボールを持つ少女の小さな手を取り、
男子日本リーグ(JBL)・日立の小林大祐は目を細めて言った。
「ひじをしっかり張らないと、ボールを(相手に)はたかれてしまうよ」
少女は少し顔を赤らめてうなずくと、
両ひじをぴんと横に突き出して見せた。
千葉・柏市中央体育館。
市の主催で、女子日本リーグ・JOMOと合同の
バスケットボール教室が開かれた。
市内の13の中学に通うバスケット部員男女約160人が集まり、
約2時間の技術指導を受けた。
講師役を務めた日立の西村文男は、
「一人でも関心を持ってくれる人を増やしたい。
やりがいを感じる」と息を弾ませる。
日立が練習拠点を置く柏市の教室に参加し始めたのは昨年から。
バスケット部の井上雅史オペレーションディレクターは、
「昔は、選手も社員で仕事を抱え、『会社のため』が第一。
なかなか地域、普及には目が向かなかった」
近年は、社業にかかわらない契約社員選手も増えた。
名門の休廃部が相次ぎ、現場には危機感が生まれた。
JBLにもプロが参入し、地域貢献、普及に力を入れていることにも
刺激を受けている。
井上さんは「意識は変わってきた。
地域活動は企業にとっても意味がある」
「地域密着型プロリーグ」として誕生したbjリーグでは、
シーズン中も、学校訪問などに回るチームが多い。
大阪エヴェッサの古屋孝生ホームタウン推進事業部長は、
「プロ球団は、地域貢献やファン開拓、底辺拡大抜きには語れない」
大阪では今季、週1度のペースで地元の小中学校を訪問、
講演で、選手が子どもたちにバスケットの魅力を伝えた。
「バスケを知らない子にも興味を持ってもらえる」と古屋部長。
07年に開校したスクールは、8校9カ所に拡大。
受講料を徴収するが、それはチームの貴重な収入源。
JBL所属のリンク栃木、レラカムイ北海道のプロ2球団も、
同様のスクールを持つ。
古屋部長は力説する。
「自分の生活に返ってくる。
プロならば、普及は『しなければならないこと』だ」
日本協会の「トップリーグのあり方検討委員会」(深津泰彦委員長)が
出した答申では、「次世代型トップリーグ」設立の目的に、
普及、振興と競技力向上を挙げている。
深津委員長は、「収益につなげる意識が、
ファン層開拓と底辺の拡大、ひいては強化につながる」
五輪には、1976年のモントリオール大会以来出場がなく、
昨年のアジア選手権は史上最低の10位。
男子は近年、国際大会で苦戦が続く。
各国ではプロ化が進み、アジアでは中国や韓国に加え、
カタール、レバノンといった国々が台頭。
その中で再び勝ち上がるために、深津委員長は、
「頂点に魅力を持たせ、優秀な人材が志す環境を
作らなくてはならない」
日本では、戦後からの企業スポーツが脈々と続いてきた。
深津委員長は、「職場の一体感を生む企業スポーツの良さは
否定できない」とした上で、
「ただ、それではファン獲得にはつながらない。
チームを一社のものにするのではなく、社会貢献活動という
観点も入れて『支援する』という形に変えてほしい」
生活を懸けた厳しい環境でファン獲得、底辺拡大に
知恵を絞ることで、競技力向上を目指す。
プロ化は、そのための必要条件。
http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/05/21/20100521ddm035050052000c.html
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