2010年6月3日木曜日

インサイド:男子バスケット界統合へ/3 難色示す企業チーム

(毎日 5月20日)

浜松市の浜松アリーナ。
プロ男子バスケットボールのbjリーグの東地区準決勝。
浜松・東三河フェニックスと東京アパッチの対戦。

2383人の観客の中に、日本リーグ(JBL)に加盟している
東芝の田中輝明ヘッドコーチ(HC)の姿。
bjとJBLを統合する「次世代型トップリーグ」の構想が
歩みだしたばかり。
観戦の目的は、かつて東芝に在籍したbj選手を見るためだったが、
自然とbjの雰囲気やレベルが気になった。

試合は、浜松が連勝で東京を破った。
田中HCは、「外国人選手が多く、派手なプレーもある。
チアリーダーなどの演出を含め、エンターテインメントを感じた」

レベルについては、「戦術、戦略はJBLの方が上。
バスケットを知らない人には、bjが面白いかもしれないけど、
知っている人には違いが分かる」

現在、JBL加盟は8チーム。
今年優勝したリンク栃木とレラカムイ北海道のプロチームを除く
6チームは、社員の福利厚生などを目的にした企業チーム。

1950年創部の東芝も、川崎市にある小向工場が主体。
日本人選手10人すべてが社員、シーズン中は小向工場や
同じ敷地内にある半導体開発の
マイクロエレクトロニクスセンターなどで午前中勤務。
シーズンオフになると、一日勤務に。

東芝は2000年、七つあった球技チームを
野球、ラグビー、男子バスケットの三つに絞り、
日本一を狙える力を持っているチームに強化を集中。
田中HCは、「会社の支援、社員の応援を常に感じている」と
企業内での一体感を強調。

プロ化も視野に入れたリーグ統合構想について、
企業チームは難色を示している。
東芝も同様だ。
上谷公志郎部長は、「強い日本代表を再生するための統合には賛成。
しかし、オールプロには反対。
企業チームとしても残れる方策を探ってほしい」

構想では、企業チームは親会社から分社化し、
独立採算を目指す案が示されている。
スポンサー獲得、観客動員など、これまでは手を出さなくてよかった
難題が加わる。
最も守りたいのは、引退後のセカンドキャリア(第二の人生)の問題。

ひとくくりに企業チームといっても、企業によって雇用形態は異なる。
JBLの六つの企業チームのうち、
日本人選手が全員社員なのは東芝だけ。
残りは、「業務委託契約」などという形で、バスケットが仕事になり、
年俸が1000万円を超えるプロ選手も。

ある企業チームの若手選手は、
「社員とプロのどちらも選べる状態だったけど、
サラリーマンにはなれないと思ったし、
バスケットのことだけを考えたかったからプロ契約を選んだ」

最近は、変化が起きている。
景気がよかったころは、一時的に大金を手にできる
プロ契約志望の選手が多かったが、
今は「社員で採用してくれるところがいい」という声が増えた。

自らも半導体部門で働いていた田中HCは、
「現役の時に仕事をすることで、将来への不安もなく
バスケットに取り組める」
選手である前に、企業人、社会人であること。
長年築き上げられてきた企業チームの誇りに、
どう手をつけるのかが統合への最大の課題。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/05/20/20100520ddm035050080000c.html

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