2010年6月3日木曜日

インタビュー・環境戦略を語る:アサヒビール・泉谷直木社長

(毎日 5月24日)

水や穀物など、天然素材を使用するビール製造では、
地球環境の保護は切実な課題。
アサヒビールは今年3月、「環境ビジョン2020」を策定、
グループ全体で、長期的に環境保全活動に取り組むことを表明。
製造工程でのCO2排出量削減や、
主力ブランド「スーパードライ」を通じた環境啓発活動にも力を入れる。
泉谷直木社長に狙いを聞いた。

--「環境ビジョン」策定の狙いは?

◆高度成長期における企業は、モノ、富の提供者。
社会の成熟化とグローバル化が進み、
現在では企業は、消費者や投資家などそれぞれの利害関係者に
どう具体的に貢献するのかが問われている。
その貢献策の一環として、環境分野の目標を定めた。

--2020年までにCO2排出量を08年比で30%削減するのが目標。

◆挑戦的な目標かもしれない。
削減量は約25万2000トン、一般家庭約4万7000世帯の
年間排出分に相当。
この目標達成には、工場や輸送過程、自動販売機など
すべての事業を見直し、削減に結びつけることが必要。
最大の排出源である工場では、08年から5工場で
「PIE煮沸法」という新技術を導入。
品質を落とさず、麦やホップの煮沸時間を短縮する世界初の技術、
CO2排出量を従来比で30%削減。

太陽光や風力発電といった新エネルギーの使用も増やす。
全国に約25万台ある自動販売機も、
ヒートポンプ式の省エネ型に順次交換する予定。

--目標達成のための最大の課題は?

◆環境技術導入のタイミングと収益のバランスを取ること。
工場を稼働させながら、CO2削減技術を導入するので、
すべてを一度にはできない。
コストなどを考えて、収益と環境対策をうまくバランスを取りながら
進めることも大切。
社員一人一人に環境意識の徹底を図ることも必要。
社員が意識を高め、日常生活でも環境保護活動を
実践できるようになるのが理想。

--製品を通じた環境保護活動は?

◆09年から、「スーパードライ」の売上本数に応じて
1本1円を積み立て、全国47都道府県の環境保護活動に
寄付するキャンペーンを始めた。
09年の寄付額は、約6億8000万円。
この活動は、今年も続ける。

--事業活動以外での取り組みは?

広島県内に、2165haの「アサヒの森」を所有。
製紙会社以外で、これだけの規模の森を所有する
企業は珍しいはず。
もとは戦時中にコルク材確保のために購入した森、
間伐材を割りばしなどに活用したり、子供たちを対象にした
森林の体験学習会を定期的に行っている。
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◇いずみや・なおき

京都産業大法学部卒。72年、アサヒビール入社。
「スーパードライ」の開発に携わった後、
グループ経営戦略本部長、専務などを経て、
今年3月から現職。61歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/05/24/20100524ddm008020027000c.html

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