2010年11月18日木曜日

情報機器を使う(4)テレビ電話で命の授業

(読売 11月11日)

2007年8月、家族と行楽中だった新潟県長岡市立上組小学校の
水谷徹平教諭(34)は、突然、激しい腹痛に襲われた。

診断は白血病。
「5年後の生存率は30%」と告げられ、一転して無菌病室での生活に。
2歳の娘に加え、もうすぐ長男も生まれてくる、
そんな時に「死」と向き合った。

家族の次に頭に浮かんだのは、担任していた5年生の教え子の顔。
「授業がやりたい。子どもたちに何かを残したい」。
テレビ電話を使った授業を思いついたが、
主治医や校長らに相談すると、ハードルは高かった。
「病状が悪化しないか」、「児童に正確な情報が伝わるか」

課題を一つ一つクリアし、パソコンと携帯情報端末で
病棟と教室をつないだのは、半年後の08年2月。
高速回線経由で、教室のスクリーンに姿を映し出した水谷さんは、
死に向き合う闘病生活の現状を伝え、子どもたちに訴えた。
「自分なりに、命を大切にすることの意味を考えて生きていってね」

懸命な治療で、病状は回復し、同年夏には上組小に現場復帰を果たす。
これをきっかけに、「いのちの授業」は、総合学習を中心に、
各教科を連動させ、命の尊さを学ぶ通年プログラムへと発展していった。

今年10月20日の道徳の授業。
4年生約70人に、「算数や国語は、先生が答えを知ってるよね。
でも、命のことは先生もよく分からない。
だから一緒に考えてみよう」と問いかけた。
使ったのは、パソコンと接続した50型の大型テレビ。

抗がん剤で髪が抜けた自分の写真や、娘と無菌病室の電話で会話する
様子などを、テレビで見せながら闘病体験を語った。
子どもたちと同世代の闘病仲間と交わした手紙や当時の写真、
思い出に残った音楽も紹介。
涙ぐむ子どもたちに、水谷さんは言った。
「いつか必ず来る命のゴールまで、
どうやって生きていくか、考えてほしい」

授業前と後に2度、「命を大切にすることとは」との題で書かせた
感想文には、早速変化が見られた。
冒頭に、「バランスの取れた食事」と書いていた女児は、
「みんなとの時間を大切にすること」と、考えを変えていた。

「写真や映像、音楽を使えばイメージがわきやすい。
思いを伝えるツールが多様になる」と語るが、
テレビ電話の活用は限定的にしている。

直接会ったほうが、何百倍もいいに決まっている。
実際話したことがあるからこそ、画面越しにでも思いが伝わる」

◆テレビ電話

電話回線などを通じ、顔を見ながら会話できる。
インターネットを使ったサービス「スカイプ」を使えば無料。
高速回線ならスムーズな通信が可能で、
教育現場では、遠隔地の学校とのテレビ会議でも使用される。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101111-OYT8T00228.htm

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