2010年11月19日金曜日

扉の向こうに:広州アジア大会新競技/3 ドラゴンボート 看護師ら22人で構成

(毎日 11月4日)

朝日が水面に映える午前6時半。
兵庫・相生湾に、船首に竜の顔、船尾に竜の尾をかたどった船が進む。
側面には竜のうろこ。
「相生ペーロン 磯風漕友会」が操るドラゴンボートだ。

メンバーのほぼ全員が、地元の男性看護師。
22人が乗り込む大人数の団体競技だが、日本代表コーチを務める
同漕友会の河田英幸監督(46)は、
「この競技に(単独の)ヒーローはいらない。だから面白い」と笑う。

相生市では1922年から、中国発祥のドラゴンボートと同じ起源を持つ
伝統行事「ペーロン競漕」が行われている。
ぺーロンには、「飛竜」、「白竜」などの意味。
98年、市立看護専門学校教員の河田監督らが中心になり、
チームを結成。
河田監督は、「きつくて大変な職業と思われがちな看護師が、
『元気だぞ』というところを見せたかった」

日本ドラゴンボート協会の勧めで、01年から競技会の
日本選手権(大阪)にも出場。
アジア大会への代表選考会となった今年7月のレースを制し、
大会3連覇を果たした。
現在、メンバーは34人。
カヌーやボートの経験者は一人もいない「雑草集団」だ。

練習も独創的。
アジア大会が迫った最近でこそ、相生湾での水上練習を
組み込んだものの、普段の練習は専門学校の敷地内に設置した
巨大な鉄製水槽(長さ7m、幅5m、高さ1・3m)で、パドルをこぐ練習を行う。
時間は、日勤が終わる午後7~9時。

河田監督は、「(湾での)水上練習に傾き過ぎると、
職場に戻ってこなくなる。
私たちの本分は看護師だから」と強調する。

船の先頭で太鼓をたたく司令塔の山本聡(36)は、
「力強いこぎだけではなく、全員のタイミングが合わないとスピードは出ない」
1匹の蛇がはったような波は、22人の心が一つになった証拠。

今回は、カヌーの一種目として出場するが、
将来は五輪入りを目指したい、という関係者も多い。
本場・中国でのアジア大会は、その絶好のアピール機会となる。
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◇ドラゴンボート

250m、500m、1000mの3種目で行われるタイムレース。
国際大会では長さ12m、幅1mのボートにこぎ手20人、太鼓手1人、
かじ取り1人の計22人が乗り込む。
古代中国の春秋戦国時代に原形ができたとされ、
1970年代から競技化が進んだ。
91年、国際連盟が設立、現在、63カ国・地域が加盟。
日本協会は92年に発足。

http://mainichi.jp/enta/sports/archive/news/2010/11/04/20101104dde035050027000c.html

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