2011年6月26日日曜日

岩手・大船渡派遣のこころのケアチーム 悩む被災者と向き合う

(2011年6月14日 毎日新聞社)

越谷市の医療法人秀峰会「北辰病院」は、
東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県大船渡市へ、
「こころのケアチーム」を派遣。

1カ月余りの間、被災者と向き合った職員は延べ222人。
現地で指揮した精神科医の中村吉伸・秀峰会理事長(63)は、
「先が見えないで、喪失感に悩む被災者の心に、
生きるあかりをともせたのならうれしい」

◇ボランティア継続機運も

大船渡市の避難所9カ所(避難者計約2600人)と
1カ所の仮設住宅(同約260人)に、4月29日から5月31日まで派遣。
医師や看護師、カウンセラー、事務員らで10人前後のチーム7班を編成。
各班が、約5日間の交代で支援に。

中村理事長によると、多くの被災者が過酷な体験から自責の念に悩んでいた。
「津波に一緒に流されながら、『ごめん』と言って友だちの手を放してしまった。
友だちは、それっきり行方が分からない」(40代の男性)

「先に逃げた高台から、屋根に乗って津波に流される息子の姿を目撃。
『がんばれ』と叫んだだけで、何もできなかった」(50代の夫婦)

段ボールで仕切った狭いスペースの避難生活が、家族関係を壊す例も。
震災前、辛うじて保たれていた嫁としゅうとめの関係が険悪化したり、
震災で死亡した父親の遺産を巡り、長男と次男が口論したり。

「被災者が、心の内を打ち明けづらいのでは」と思った中村理事長は、
大船渡市側に持ち掛けて、避難所内にケアルームを設けた。

スタッフがマッサージをしたり、トンカツを提供するなど交流を図った結果、
次第にケアルームを訪ねる人が増えた。
半月後、被災者のほか消防関係者や市職員、警察官らも、
「眠れない」などと訴え足を運ぶようになった。

「いま一番したいことは何ですか?」
ケアチームの一人、村上秀俊・事務次長(42)が、40代の女性に尋ねた。
女性は、津波で自宅が半壊、夫と避難所で暮らす。
女性の返答は、「コーヒーを自分でたて飲みたい」
村上さんは早速、越谷市内の病院にいる青木勇人事務長(39)に連絡。
青木事務長は、ケアチームの交代を兼ねた翌日、
コーヒー豆とコーヒーメーカーを持って、車で大船渡市へ。

震災後、初めて自分でたてて飲むコーヒーの香り。
震災前の日常を思い出し、感情がこみ上げたのか、
女性は村上さんの前で号泣。
以来、「人を信用できるようになった」と表情も明るくなり、
避難所で他の人とよく会話するようになった。

「こころのケアチーム」の最終班は、戸田公明・大船渡市長を訪ね、
北辰病院の患者が折った千羽鶴を贈った。
中村理事長は、「医療スタッフは被災地のケア体験を通し、多くを学んだ

震災から3カ月が過ぎ、北辰病院の職場では、
いま「週末に被災地へ出かけ、がれきの撤去に汗を流そう」と、
ボランティア継続の機運が盛り上がっている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/6/14/137926/

0 件のコメント: