2011年7月2日土曜日

なぜ起きるの? 熱中症/上 医療&健康ナビ

(2011年6月19日 毎日新聞社)

梅雨明けから夏の盛りにかけて、熱中症が多発する季節。
厚生労働省によると、毎年平均で約350人が死亡。
気象庁が発表した3カ月予報では、気温は九州から北陸、東海までは
平年並みか高めで、東北と北海道は平年並み。
東京電力福島第1原発事故の影響で節電が求められるなか、
専門家は、「熱中症の症状やメカニズムを理解し、予防につなげてほしい

◇くらっと目まい

10年8月18日、千葉県旭市。
左官業の50代男性が仕事の手を休めると、突然くらっと目まいがして倒れた。
この日の天気は曇りで、日中の気温約28度、湿度約90%と蒸し暑かった。
くらっとしたのは、この夏だけで3~4回目。
市内の国保旭中央病院救急救命科に駆け込んだ。
体温は36度7分、脈拍や血圧なども安定、
両腕につったような感じと脱水症状があった。
熱中症と診断、生理食塩水を点滴されると、症状が消えた。

◇高齢者は要注意

人は暑かったり、運動などで体温が上がると、汗を流すなどして体温を調節。
汗が皮膚から蒸発すると、気化熱が奪われて体温を下げることができる。
血液の流れが、体内の熱を皮膚の下に運び出し、網目のように広がる
毛細血管を流れる間に、外気へ放熱。

発汗による脱水症状が進むと血液が減り、熱を運ぶ機能が下がる。
心臓が血流をスムーズにするため、心拍数を上げようとしても、
高温にさらされ、心臓を動かす筋肉に流れる血液も減り、
心臓への負担が増す。
その結果、体温調節が困難になり、体温が上昇、
熱中症になりやすくなる。

心臓の機能が弱っている心疾患や、血圧を下げる薬を服用している
高血圧の人は、危険性が高い。
高齢者も、発汗機能の低下や体内水分量の減少、
暑さに対する感受性の悪化などで注意が必要。

日本救急医学会「熱中症に関する委員会」委員長の三宅康史医師は、
「高齢者は、熱帯夜や猛暑日が続くと、徐々に脱水が進み、
持病が悪化したり食欲が落ちたりする。
複合的な要因が絡んで、熱中症になる」

熱中症の危険性は気温のほか、湿度や日差しの強さなど、
さまざまな気象条件が影響。

天気予報の気温は通常、直射日光が当たらない日陰で計測。
「気温30度」と発表されていても、アスファルト上の体感温度は
さらに4~5度高い。
財団法人「気象業務支援センター」の専任主任技師、村山貢司さんは、
「天気予報の気温が32度を超えると、路上での体感温度は
体温を超えているので注意して」

梅雨明け直後や梅雨の晴れ間など、急に暑くなった時や
風が弱く湿度が高い時は、体が暑さに慣れていないうえ、
汗が蒸発しないので、警戒が必要。

◇屋内でも重症化

熱中症は、重症度に応じて軽い方から1~3度に分類。
日本救急医学会の調査によると、10年の熱中症1780症例のうち
約4割が1度、2と3度はそれぞれ約3割。

年齢別では、50歳以上で3度の割合が多く、高齢者ほど重症化の傾向。
10代は運動中、20~50代は仕事中、60代以上は日常生活の中で
発症するケースが目立ち、日常生活で発症した半数超は屋内にいる時

左官業の男性は、「水分摂取を心がけていた」
国保旭中央病院の神田潤医師は、「対策をしているつもりでも、
水分や塩分などの補給不足で、不十分なケースがある。
症状が軽いうちに対処すれば、重症化せずに済むので、
目まいや筋肉痛など熱中症の症状があれば、早めに医療機関を受診して」
………………………………………………………………………
◆日本神経救急学会による熱中症の症状と重症度の分類

分類 症状                                重症度
1度 目まい・失神・筋肉痛・筋肉のこむら返り・大量の発汗    軽                                                  
                                        ↑
2度 頭痛・不快感・吐き気・だるさ・虚脱感・意識障害・けいれん
                                        ↓
3度 手足の運動障害・高体温                     重

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/6/20/138136/

0 件のコメント: