(読売 1月23日)
山村の小さな学校が、不登校の生徒の心の扉を開き始めた。
ヘルメットをかぶり、軍手をはめ、長靴をはいた何人かの生徒が、
初体験のチェーンソーと格闘。
硬い幹に刃を当てても、簡単にはね返される。
足場は急斜面で、ひっくり返る生徒が続出。
「油断すると大けがをするから、くれぐれも気を付けて」と声をかけるのが、
「どんぐり向方学園」の学園長、中野昌俊さん(65)(名古屋経済大教授)。
生徒が失敗を繰り返しながら木を切り倒すと、
「すっげえ」「びびった」といった声とともに、「次は自分が」と手が挙がった。
人口約1800人、長野県最南端の天竜村にある学園で、
昨年11月に行われた林業体験。
「ほかの学校ではこんなことはさせないだろうが、ここではあえてさせる。
危険は体験しなければわからない」と中野さん。
教員とともに林業を営む住民も立ち会い、安全には気遣いを欠かさない。
開校は2005年。NPO法人が母体。
不登校経験など様々な事情を持つ小学6年から中学3年までの15人が、
寮生活をしながら学んでいる。
教科学習は午前だけで、午後は体験学習中心。
イネを育てたり、山で植林をしたり、自然に直接触れる課題を取り入れてきた。
「自然は思い通りにいかない。失敗することで工夫を考える。
1人で無理なら仲間と協力する。社会性が身につき、自立する」
という中野さんの考えからだ。
ゲームや携帯電話に没入することを子供に許し、子供を危険から遠ざけている
社会に警鐘を鳴らす。
「自分はできるという自信を獲得する体験の場がない。
子供たちに今それが必要です」
大阪府出身で、入学して2年の森田廉平君(13)(中学2年)は
「外での体験学習が楽しい。自分のやりたいことも自分で計画さえすれば、
やらせてもらえる。来て良かった」と笑顔を見せた。
我が子を送り出すことに親側の抵抗感が大きい。
昨年4月~11月まで、1週間の「体験入学」には16人の子供が参加したが、
入学者は8人にとどまった。
途中で転校する子もいる。それでも、3年間で22人が卒業。
昨春の卒業生、竹居賢治さん(16)は、不登校経験者だが、
今は都内の高校に元気に通う。
「自然に触れたことは全くなかったので、毎日が刺激的だった。
体験しないとわからないことが世の中にたくさんある。
今では教室の勉強がすべてではないと、自分を切り替えられる」
校舎は、廃校になった小学校を村から無償で提供され、
寮も村の予算1億円で建設。
学校法人を作ったことで、県からは年間1000万~1500万円を受け、
寄付も年間約300万円。
「経営的に安定はしているが、施設補修やIT環境の整備など、
積極的な施設整備はできない。児童生徒数は30人程度が目標だ」
開校時から生徒数は横ばい。まずその増加が課題のようだ。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090123-OYT8T00235.htm
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