2009年2月6日金曜日

特集:健康を考える スギ花粉症

(毎日 2009年1月30日)

花粉症は国民の16%、2000万人以上が罹患する「国民病」。
日本では、1964年にスギ花粉症が報告され、その後、四十数年で
60種以上が確認されるなか、特にこのスギ花粉症が激増。
環境省は、今年のスギ、ヒノキの花粉の飛散は全国的に
「平年並みから多め」と見込み、「開始日」も1-2週間早いと予測。
医療法人森下眼科の森下清文理事長が、花粉症の予防策などについて。

花粉症は、アレルギー性疾患。
私たちには、異物(抗原)が入るとそれを察知して体内に「抗体」を作り、
異物を排除する機能がある。

この免疫反応が必要以上に敏感になり、それほど害にならないものまで
排除しようとして生じるのが「アレルギー」。

花粉症のアレルギー反応を見ると、花粉が粘膜や結膜に付着すると
「IgE抗体」が作られる。
特定の細胞(肥満細胞)に結合し、繰り返し花粉と接触するうちに
抗原に反応して肥満細胞が破壊され、ヒスタミンなどの刺激物質を放出。

スギ花粉症の激増の背景には、スギ林の増加が。
戦後の山林振興策で、1950~70年に全国でスギが造林され、
スギの面積が全国の森林の18%、国土の12%を占め、
452万ヘクタールにも広がった。
多くが樹齢30年を超え、現在最も多くの花粉を作る時期に。

花粉症の主症状は、目のかゆみ、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりの四つ。
目の場合、目の周囲がかゆくなり、まぶたが腫れぼったくなり、
結膜が赤く腫れる。掻くと悪化し、結膜や角膜を傷つけ、
かすんだり、まぶしく感じたり。

鼻では、粘膜についた花粉を取り除こうとしてくしゃみが出る。
洗い流そうとして鼻水が出る、花粉を侵入させまいとして粘膜が腫れる。
ひどくなると、全身の倦怠感や発熱を伴う。

日常生活での注意では、マスクや眼鏡の併用が効果的。
市販の不織布やフィルター付きマスクは、正面からの花粉の90%前後をカットし、
頬などにすき間ができないよう、フィットしたマスクを選ぶことが必要。
マスクには保温・保湿効果もあり、粘膜の荒れを防ぐ。
普通の眼鏡でも、結膜への花粉の付着を60-70%カット。

ゴーグル型だと90%カット。
服装は、花粉が付きにくい上着やコート、表面がツルツルして織り目が詰まった
ナイロン素材がよく、髪は束ねて帽子をかぶるのがいい。
花粉が付きにくくなるスプレーなどの便利グッズも。

帰宅したら、玄関で衣服や髪に付いた花粉を払い落とし、屋内に花粉を入れない。
花粉は最高気温が15度以上、湿度が60%以下になると飛びやすく、
風が強い日は60-80キロと遠くまで飛ぶ。
飛散量が多い時、窓などを開けっ放しにせず、洗濯物も外で干さない。

毎日こまめに掃除する、干した布団や洗濯物は取り込む前にはたくなどして
花粉を落とす。空気清浄機を使うのもいい。
うがい、洗顔、目を洗うのもいい。
防腐剤の入っていない点眼(人工涙液)5-6滴で洗い流す。

食事面では、カテキンにはアレルギーを抑える成分。
ニンジンのβカロチンには、IgE抗体を減らす、
鼻詰まりにはシソ、西洋フキなどに効果が。

予防面では、花粉情報をこまめにチェックし、
自分の「花粉日記」で症状がいつごろ出るのか分かれば、
その2週間ほど前から抗アレルギー薬で発症を予防したり、軽減させる。

スギ花粉症は、少しの花粉でも反応が出る人がいるため、
花粉飛散の開始日前から治療を始めることも「初期治療」として認められる。

抗アレルギー薬には、細胞を安定させ、ヒスタミンなどが出ないようにする
ケミカルメディエーター遊離抑制薬」、
出てしまったヒスタミンが働かないようにする「抗ヒスタミン薬」がある。

症状が強い時は、ステロイドを使用する場合。
内服薬としての第2世代の抗ヒスタミン薬は、即効性がある。
市販薬も数多く出回っているが、専門医を受診し、適切なアドバイスを
受けることをお勧め。
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◇花粉情報サイト

スギ花粉飛散開始マップはじめ、花粉症関連の情報・データなどを
まとめた環境省のページ。
2月上旬から、各地の花粉飛散情報を報告する「花粉観測システム」
(はなこさん)の運用が始まる予定。
http://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/
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◇もりした・せいぶん

1954年三重県伊賀市生まれ。
80年兵庫医科大卒業後、大阪医科大眼科学教室で研修。
82年神戸海星病院、83年北野病院に勤務。
84年から同医科大で白内障、緑内障、眼底疾患の診療・研究に従事。
88年同医科大講師。91年大阪市北区天神橋で医療法人森下眼科を開業。
医学博士。市民健康講座「目の勉強会」代表世話人。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/30/90873/

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