(読売 1月24日)
民間出身で公立学校長を経験した人材が、新たな道を歩んでいる。
「ひとはいざ こころもしらずふるさとは はなぞむかしの かににおいける」
三原徹校長(60)が、紀貫之の歌を読み上げると、
札を取る3年生の元気な声が教室に響いた。
私立東京女学館小学校(東京・広尾)で、
道徳の時間を使って行われた百人一首の授業。
同小には、日本人女性としての品性を身につけるため、茶道、華道、
着付け、日本舞踊、お箏など伝統文化を学ぶ時間がある。
百人一首は、以前から校長の担当。
ベネッセコーポレーションから転じて東京都足立区立五反野小の校長を4年務め、
昨春、女学館に招かれた三原さんも、その役割を引き継いだ。
歴史ある私立校への再度の転身。
「1年はまず様子見」と前任者の敷いたレールに乗ってきた。
まもなくその1年が終わる。
「伝統校でも、年ごとの課題は必ずあるはず」と、
新年度からの学校経営計画を作るため、
年明けから保護者に提案や意見を求めている。
「私学に通わせる保護者の期待は大きいはずだが、
口に出して言ってもらう機会が少ない。
私の役割は、学校と社会、教員と保護者の論理の落差を埋めていくこと」
その姿勢は、五反野小時代と変わらない。
同小の後任校長は、三原さんを副校長として2年間支えた土肥和久さん(49)。
民間出身ではないが、「後を託すならこの人」と三原さんが見込んだ逸材。
定年まで1年を残して三原さんが退職したのも、土肥さんの内部昇格を促すため。
地域住民らが学校運営に参画するコミュニティスクールの制度を
十分に生かした学校運営を続けている。
リクルート出身で、東京都杉並区立和田中学校長としての5年間に、
様々な改革を進めた藤原和博さん(53)は、
「公立学校を変えるためには、もっと民間出身校長を増やすべきだ」
昨年、大阪府特別顧問に招かれ、大阪の教育改革のために飛び回る。
藤原さんの提唱で、今春には、府内の義務教育学校では初めて、
寝屋川市内で民間出身の中学校長が誕生。
パナソニック出身の牧野一徳さん(57)。
東日本では、三原さんと同じベネッセ出身の水野次郎さん(51)が
千葉県立高校の教頭として修業中で、今春、校長に就く。
ベネッセ退職後、伊豆でプチホテルを経営、漁師の息子である高校生が
主人公の小説を書き、文学賞も受賞したユニークな人材。
教員免許を持たなくても、教育関連の仕事の経験がなくても、
公立学校の校長になれる制度が始まったのは2000年。
この制度で生まれた民間出身校長は、ピークの05年に92人を数えた。
その後はやや減少傾向に。
起用した自治体による効果の検証も十分ではない。
民間出身の校長起用が、「校長にふさわしい人材とは何か」を、
今も問い続けていることは間違いない。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090124-OYT8T00323.htm
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