(低炭素社会づくり 1月22日)
やまだ:経済と環境の話がどう結びつくのか?
これまで、モノをつくって経済を発展させ、豊かになってきたが、
現在では、その発展によって地球環境の破壊が起こっている。
このまま経済を推し進めて、環境もよくなっていく仕組みが存在するのか?
河口:経済と環境の共生は、わたしたちの心がけ次第で可能。
「お金に意志をもたせる」という言葉をよく使っているが、
お金がお金を生む、という仕組みをまず理解。
投資によって、お金が世の中で働いてお金(の子ども)を生む、
という考え方はあまり馴染みがないかも。
やまだ:現金が手元にあると使ってしまうから、銀行に預けるという考え方。
河口:銀行は、みんなからお金を預かって、お金を事業に貸して、利益を得る。
お金がどんなふうに働くのか、ということが重要。
どういう事業に貸したり投資するかが問われる。
バブル経済の時代は、巨額の不動産投資が行われ経済が急速に拡大したが、
事業内容の社会的な善し悪しは問われなかった。
今では、武器の製造に投資して20%儲かるのと、
再生エネルギーの製造に投資して10%儲かるのでは、
社会的により望ましいのはどちらか、といった「意志」が重要。
個人的には20%儲かっても、世界中で争いが増えるほうが幸せか?
自分の利益は10%でも、再生エネルギーが普及して
地球環境がよくなるほうがいい、と判断する人が増えてきている。
投資する事業が、どう社会に貢献するか、どれくらい利益をあげられるか、
という両面を考える。
河口:企業から、SRIについて教えてほしいという依頼が増えている。
利益だけでなく、環境に配慮した事業へ積極的に投資する方向へと、
企業や投資家が模索している段階。
お金には、環境を変える力があることを気がつかなかった人たちが、
これから投資の世界で動き出せば、世の中は変わっていく。
環境のためにできることは、ゴミを分別したりエコバックを使うだけでない。
最先端の環境技術に投資することも。
自然の乱開発に反対するなら、木に抱きついてブルドーザーを止めるよりも、
その開発事業への融資を止めるほうが、効果がある。
やまだ:お金にもエコな活動をさせる。
河口:日本は、個人の金融資産が1500兆円もある国。
その半分が預貯金。
この預貯金に意志を持たせたら、すごい力を発揮。
エコ事業に投資しようという貯金や寄付が出ている。
寄付も大事だが、もらって使って終わってしまうという意味では
サスティナブル(持続可能)ではない。
エコなビジネスを成り立たせ、利益をあげて回していくことが大切。
お金を使ってモノやサービスを提供して、利益を出して、
またお金が戻ってくる、これが経済。
お金をグリーンにするとは、経済のサイクルにエコの考え方を入れること。
森林を破壊しない材料とクリーンなエネルギーを使い、
使用後はリサイクルもできるモノをつくるれば、お金がグリーンになっていく。
やまだ:10~20代の人は、環境について教育を受けているが、
金融教育についてはまだ普及していない。
金融の基本を知って、環境に配慮した事業に投資しなければいけない
時代が来るということは、両方の教育が重要に。
河口:アメリカや英国の小学生に対する金融教育では、リスクとチャンス、
税金、寄付など、どうやってお金と付き合うかを教えている。
資産を運用するとき、あなたの意思決定が社会をつくるから、
あなたには責任があるのですよ、ということを教えている。
やまだ:格差社会がニュースで伝えられて、子どもたちはお金さえなければ
平和な社会なのに、と考えてしまう傾向。
経済で動かしている社会の上に生きていることを、わかってもらいたい。
河口:お金は、自分を幸せにするための道具。
お金を崇拝するのでも忌み嫌うのでもなく、対等な立場で付き合っていきたい。
自分が汗水流して働くと同時に、自分のお金にもちゃんと働いてもらう、
という発想が大切。
金融の先進国イギリスは、産業革命の後、金融立国を実現。
「サスティナブル・ファイナンス」を打ち出し、環境に配慮したサスティナビリティが
評価の対象になるような、新しい金融のしくみをつくっている。
これまでは、違法伐採の木材で安く家具をつくれば得をする、というように
エコは経済のしくみの外にあったが、今はそんな企業は信用されない。
環境の問題に配慮することは、経済の必須条件になっている。
やまだ:不景気になって、これまでの価値観を再認識するきっかけに。
新しい動きとして見ておくといいというものは?
河口:若いソーシャル・アントレプレナー(社会的企業家)が活躍。
彼らの活動からは、若い人たちも刺激を受けたり学ぶところがある。
青森や秋田、長野など、日本各地で地方自治体や市民が協力して
運営しているグリーン電力ファンドの活動なども、軌道に乗っている。
やまだ:低炭素社会実現の目標である2050年に向け、経済分野での課題は?
河口:過去の成功体験を持っている日本の企業人は、
「経済成長」から頭を切り替えることが難しい。
経済成長だけでなく、新しい「成長」=サステナビリティのかたちがある。
今後、炭素エネルギーである石油が使えなかったらどうするか、
を真剣に考えなければならない。
石油・石炭に頼らない新・再生可能エネルギーの時代に、
パラダイム・シフトしなければならない。
最先端の技術によって、昔から使っていたエネルギーや素材の可能性を
再評価することができる。
必ず社会に貢献する新しいビジネスとなる。
日本の江戸時代は、再生可能エネルギーだけで持続的な社会を作っていた。
そこから学ぶものは沢山あるはず。
新たな安全で経済的生活のため、お金の新しい使い方が求められることを、
企業も生活者も自覚していきたい。
やまだ:経済と環境のことをしっかり勉強して、社会に貢献している会社や事業に
投資をすることが、環境を守ることにつながる。
「地球を救うのはあなた、とあなたのお金」とも言えるかも。
◆河口真理子
株式会社大和総研経営戦略研究所主任研究員。
一橋大学大学院修士課程修了。大和証券外国株式部、投資情報部を経て、
1994年に大和総研に転籍、企業調査部を経て現職。
研究テーマは環境経営、企業の環境評価、環境会計、環境報告書、
社会的責任投資、企業の社会的責任。
青山学院大学非常勤講師、東京都環境審議会委員、サステナ日本評議委員、
社会的責任投資フォーラム代表理事・事務局長などを歴任。
著書に『SRI 社会的責任投資入門』(日本経済新聞社=共著)など。
http://www.team-6.jp/teitanso/dialogue/index.html
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