2009年2月15日日曜日

数字力を装備、仕事に切れ味

(日経 2月3日)

「売り上げをもう少し上げたい」、
「もうちょっと原価を抑えられないか」。
「もう少し」、「もうちょっと」。
数字が苦手な人は、あやふやな言葉を使ってしまう場面が多い。
「数字力」を養って、ビジネスシーンで生かすコツを専門家に聞いた。

「数字力を高めると、具体的な対応策や発想力を身につけられる」
「ビジネスマンのための『数字力』養成講座」の著者で、
小宮コンサルタンツ代表の小宮一慶氏はこう語る。

「何日」、「何%」、「何人」など、今まであやふやだった点を
すべて数字に置き換えて考える癖を付けると、
目標や目標達成のための手段も見えてくる。
「数字を通して、仕事への責任感も高まる」

基本的な数字を覚える癖をつけよう。
自社の売上高といった基本的な数字を把握。
自社の業界内でのシェアを把握したり、従業員1人当たりではどうかなど、
「一つの数字を取っ掛かりにして、自社や他社を見る発想を広げる」のが重要。

小宮氏が景気を見る際に使う主な数字
▽四半期 ・名目GDP
▽月 ・現金給与総額 ・有効求人倍率 ・消費支出 ・消費者物価指数
▽毎日 ・為替相場 ・短期金融市場 ・日経平均株価 ・東証1部の売買代金

数字を覚えたり、分析したりする際の心得は、
「大きな数字」と「小さな数字」を意識すること。
会社の売上高や国内総生産(GDP)などは億、兆単位で
どのくらいかを意識して覚えればいい。

「小さくても大切な数字もある」。
例えば、合計特殊出生率。
0.1ポイント違うだけで、50年後の日本の人口は大きくずれる。

1人の従業員が一時間に生み出す粗利益を表す「人時生産性」という指標も。
わずか25円の違いでも、影響は大きい。
5000人の従業員が月150時間働いている会社であれば、
月に1875万円、年間では2億2500万円の差。

どのような場合に小さな数字にこだわるのか。
これをきちんと判断できるようになるには、
「数字の定義をきちんと把握する必要がある」

数字への感度を高めるには、外国為替や日経平均株価などの数字を
毎日、新聞でチェックする。
ただ見るだけでなく、専用の手帳などに為替や株価などの変化を記入し、
1週間に1度、変化の理由をほかの数字を使って説明。

為替相場は、金利差で動くことがある。
高金利の通貨が運用に有利との理由で買われて、
金利の低い通貨が売られるといった具合。
金利を引き下げた国の株価や為替相場がどうなっているのかを
観測するなどして、数字の持つ意味を学ぶ姿勢が重要。
数字をきっかけに、様々な世間の動きに興味を持てる。

小宮氏は、「数字同士の関連がみえてくると、世界の見方も変わってくる」
GDPは新聞などで取り上げられるが、一般の人が身近に感じることは少ない。
自分の給料と関係するとなれば、話が変わってくる。

GDPは、国内で生み出された付加価値の総合計を指す。
企業の損益計算書では、ほぼ粗利益に相当。
GDPのうち、給与などの人件費に充てられる部分は「労働分配率」と呼ばれ、
平均して60%程度。
労働分配率が大幅に上がらない限り、GDPが低下すると、
我々の給料も下がるとの予測が成り立つ。

数字を分析すると、数字が持つ特殊な傾向や意味合いがわかる。
例えば、建設会社の業績が好調になるのは、
景気がピークを過ぎた後になることが多い。
景気が持ち直して、民間企業が設備投資を増やしたとしても、
建設会社が工場の建屋などを完成させて売り上げに計上するまで時間差がある。

ゴルフ会員権の価格は、富裕層の消費動向をみるのに有効。
「政府や機関投資家による売買の関与が薄いので、
純粋に富裕層のお金の勢いを見るのに適している」

小宮氏は、景気の先行きを見通す上で、
米国の住宅着工戸数や住宅価格指数に注目。
個人消費主導型の米国経済にとって、
住宅着工戸数は日本以上に大きな意味を持つ。
年換算で150万戸程度になれば、米国景気も持ち直し、米国への輸出も増える。
「製造業を中心に、日本の経済もよくなるはずだ」

会社の経営状況をすぐに見るにはどうすればよいのか。
企業財務のコンサルタントを手掛ける
東京メトロポリタン税理士法人の北岡修一氏に聞いた。

「資産の状況を把握することが大事」
賃借対照表で、流動資産と流動負債の値を見る。
流動負債は、1年以内に返済しなければならない負債。
流動資産は、現預金などすぐに資金化できる資産のこと。

経営破綻するときは、借金を返済できなくなるケースが多い。
「流動負債よりも、流動資産が多ければ当面は大丈夫そうだ」と判断。
もちろん業種により、状況は異なる。
日銭が入る小売業であれば、多少下回っていても大丈夫な場合もある。

それ以外では、売上高と資産の伸び率を見る。
売上高より、資産の方が伸び率が大きい場合、資産が遊休化している危険性が。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090203.html

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