(日経 2月4日)
不況色と雇用不安が強まる当世。
自己アピールと自己防衛を兼ねて、資格取得をテコに
「ワンランク上」のビジネスパーソンを目指す人も多い。
弁護士や公認会計士のように、合格すれば独立開業の道が
開ける資格もあるが、勉強と仕事を両立させるのは難しい。
ハードルが高すぎず、ビジネスの「地力アップ」につながる資格は?
資格選びの発想や生かし方を探ってみた。
◆行政書士/知財管理技能 「広さと深さ」両立
幅広い総括的な知識を問う資格と、特定分野に深く突っ込んだ資格とを
組み合わせる「T字型」。
能力開発コンサルタントで、自ら90種類もの資格を持つ高島徹治氏(71)が
提案する資格取得戦略。
「法律の専門家」とみなされる行政書士と、年金問題などに精通した
社会保険労務士や知的財産管理技能検定の組み合わせ。
知財検定は、弁理士に比べれば取得が難しくなく、
比較的新しい分野のため人材需要も期待できる。
「自らのファンダメンタルズ(基礎力)の高さを行政書士で、
法体系全体のなかで知財管理ができるという安定感を
知財検定でアピールできる」
「転ばぬ先のつえ」という意味合いで高島氏が挙げるのが、
東京商工会議所などが実施している環境社会検定(エコ検定)。
昨夏の試験では、合格率が約80%と比較的挑戦しやすい。
企業が環境志向を強める中、環境や企業の社会的責任(CSR)の
担当者以外の社員も、一定の知識と行動が求められる。
合格してキャリアアップというよりも、時流に乗り損ねて「仲間外れ」に
ならないようリスクヘッジしておくのも手。
株安など不況が深刻化する中、「はやらないと見られがちな
ファイナンシャル・プランニング技能検定には、違った活用法もある」
3級は誰でも受験可能。
金融関連分野について広く学ぶので、積極的な資産運用というのではなく、
取引先の査定や与信管理などビジネスで、
つまずかないためのスキルとして利用できる。
資産の目減りを防ぐなど個人の生活防衛にも有効。
資格取得の成功、不成功は最終的にどう生かすかで決まる。
「今の仕事が嫌になったので、資格を取って転職したい、という動機では失敗が多い」
資格を取るなら、一定の経験があって取得後のイメージを描ける分野で
選ぶのが王道のようだ。
◆個人情報保護/消費生活相談 自分の「キャラ」強化
リクルートの情報誌「稼げる資格」(年2回発行)の編集人、
乾喜一郎氏(41、キャリア・カウンセラー)が挙げる資格選びのポイントは、
「いかに自分のキャラクターを強くできるか」
個人情報保護士や、昨夏に民間試験から国家検定に移行した
知的財産管理技能検定。
いずれも特別な受験資格は必要ない(知財検定は3級の場合)。
営業部門のビジネスパーソンなら、顧客から相談を受け、受注につながることも。
「コミュニケーションやコンサルティング能力があることを、
相手に納得させるのは難しい」
そのような時にこれらの資格が物を言い、一枚上手の営業員として印象付けられる。
地方の都市ガス会社の総務部門に勤務する男性(46)は、
消費生活アドバイザーの顔を持つ。消費者と企業のパイプ役。
料金改定時などの説明の際、「相手(消費者側)の問題意識も分かった上なら、
会話もスムーズに進む」
乾氏は、資格選びの第一歩として
「自分に向いているかどうかを見極めることが大切」と念を押す。
合格者の体験談を聞くなどして、立場や動機など自分と似た属性を持つ
「ロールモデル」を見つけることが早道。
◆簿記検定/中小診断士 基礎回帰で土台固め
「会計は、いまやビジネスパーソンに必要なリテラシー(教養)」
資格学校大手、TACの鎌田浩嗣取締役(43、公認会計士)。
定番の簿記検定。
貸借対照表や損益計算書の見方など、受験勉強を通じて改めて
分かることも少なくない。
中小企業診断士は、マーケティングや財務分析など経営全般を
バランス良く学べ、一定のステータスもある。
「独立して食べていけるほどの資格ではないが、
社内や取引先へのアピール度を高めるには効果的」
社員の能力も厳しく問われる選別の時代。
「これぐらい知らないとマイナス評価されかねない」という観点から、
簿記検定のように、ビジネスの土台を固める
「基礎回帰」型の資格選択も一考に値しそう。
将来への布石を打つなら米国公認会計士がある。
「日本でも、2011年度以降の国際会計基準導入が
検討され始めたことで注目されつつある」
国内資本の企業でも、資格取得者への需要が増える可能性がある。
英語で受験しなければならないが、
問題の難易度は日本の公認会計士試験ほどではない。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090204.html
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