(毎日 2月12日)
五輪は、カナダが一つになる機会となるかもしれない。
昨年7月、五輪スキー競技などの会場となるウィスラーに、
「スコーミッシュ・リリワット・カルチュラルセンター」がオープン。
バンクーバーのあるブリティッシュコロンビア(BC)州の先住民、
スコーミッシュ族とリリワット族の文化や歴史を紹介する施設。
ここで語り部を務めるリリワット族のウィリアム・リッチーさん(48)は、
五輪開会式で、民族に伝わる舞踊を披露する予定。
リッチーさんは、「私たちのことを多くの人に知ってほしい」と、
五輪が自分たちの存在を広めるきっかけになることを期待。
スコーミッシュ族やリリワット族は、昔からBC州南部でカヌーに乗って
サケを取ったり、杉の皮でバスケットを作ったりしながら穏やかに暮らしてきた。
19世紀半ば、「インディアン・アクト」という法律が施行、同化政策が始まる。
イヌイットやインディアンと呼ばれた先住民は、国が定める居住地区へ移住、
子供たちは先住民向け寄宿学校で英語教育を強制。
「自分たちの言葉を禁じられ、文化も忘れるよう強要された」(リッチーさん)。
子供たちは宿舎に閉じこめられ、日常的に教師から暴力も振るわれた。
リッチーさんの妻は、数年前にサッカー場で寄宿学校の教師だった男性を
見掛け、過去の恐怖を思い出して錯乱状態に陥った。
寄宿学校は、96年までは存在。「被害者」は約15万人。
カナダのハーパー首相は昨年6月、
先住民に対する強制入学が誤りだったと公式に謝罪。
先住民の間で、国への怒りやわだかまりは消えてはいない。
五輪に否定的な部族もいる。
しかし、BC州の大きな4部族は、国から「五輪に協力してほしい」と
要請された際、手を携えて積極的に参加することを決めた。
リッチーさんは、「国には、『先住民と一体』という姿勢をPRする狙いがあるが、
我々にとっても自分たちの文化や存在を世界に発信する良い機会」
開会式への参加だけでなく、五輪に合わせて先住民古来の文化と伝統を
紹介する展示会も開かれる。
バンクーバー五輪のロゴマークには、イヌイットのヒト形道しるべ
「イヌクシュク」があしらわれている。
カナダで過去2度、五輪が開かれた時には残っていた
不合理な制度や寄宿学校は、もう存在しない。
リッチーさんは笑顔で言った。
「世界の目が集まる中で踊るのは楽しみです」
http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/02/12/20090212ddm035050114000c.html
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