(読売 5月16日)
東大、京大合格者300人。そんなスーパー進学校が誕生するかも。
大阪市淀川区の府立北野高校。
手塚治虫、梶井基次郎ら数々の才人を輩出した創立136年の名門は、
府内屈指の進学校としても知られる。
4月の昼休み。3年生の教室で、生徒6人が前回の数学演習で出された
問題の解答を、黒板に書き始めた。
通常より長い65分の授業時間を、少しでも無駄にしないよう、
チャイムと同時に教諭が解説を始められるようにする。
始業時間は午前8時10分。
土曜も大半の生徒が登校し、補講を受ける。
3年生の場合、夏休みは20日しかなく、残りは授業に。
2008年度、京都大学と大阪大学に計111人(現役74人)が合格。
男子生徒は、「授業をしっかりやれば、第一志望に受かるはず」
府教委は、同校など10校を進学指導特色校に指定し、
学区制を見直した上で、定員の半数は学区を越えて
成績優秀者を集める計画を打ち出した。
発案したのは、北野高OBでもある橋下徹知事。
「東大、京大に300人送り込む日本一の公立を」と号令をかけ、
受験重視のカリキュラムを導入する考え。
「私学は、中・高一貫で鍛えている。
進学を目指す生徒の思いに応えるには、私学を上回る取り組みが必要」
同高の八尾隆校長も力を込める。
受験対策に本腰を入れ始めたのは、一部の進学校だけではない。
4月3日。大阪府岸和田市の府立久米田高校の新3年生12人が
真剣な表情で黒板を見つめていた。
大阪教育大学内に借りた教室の窓の外は、やがて真っ暗に。
「鬼勉」
進学を希望する生徒を対象にした2泊3日の勉強合宿。
初日、2日目と勉強時間は10時間を超えたが、
夜中も自習する生徒がいた。
ある生徒は、「みんなが勉強しているので励みになる」
合宿は、昨夏に続いて2度目。
今春、合宿参加者が、同校としては8年ぶりに
国立大の一般入試で現役合格を果たした。
吉川測雄校長は、「生徒の自己実現のためには、受験対策も大切な要素」
5月から、土曜に受験対策講習を始めた。
夏休みには、3度目の勉強合宿も計画。
土曜補講を後押しするのが、府教委が昨秋創設した特殊勤務手当。
以前は、教員が無償で行うしかなかったが、
現在は「6時間以上の土曜勤務で日額2900円」などの基準で支給。
教員らは、「金額はわずかだが、現場の努力に報いようという姿勢を感じる」
こうした取り組みに、「府立高校の予備校化」との反発も強い。
ある校長は、「難関大志望者が優遇されるだけ」と批判。
教育評論家の尾木直樹・法政大学教授は、
「部活や行事で、生徒を伸ばす公立の利点が失われる」と警鐘。
府立高校での受験指導は、公教育のあり方を巡る論議も巻き起こしている。
◆学区制
公立高校普通科の学区は、2001年度の地方教育行政法の改正により、
撤廃が可能に。
私立人気が高まる中、学生を公立に呼び戻そうと、
全国で学区再編の動きが活発化。
03年春、撤廃した東京都では、都立日比谷高校の東大現役合格者が急増。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090516-OYT8T00234.htm
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