2009年5月17日日曜日

Jアジア枠 躍動と課題と

(朝日 2009年5月12日)

今季からJリーグが導入したアジア枠。
従来の外国籍選手枠3人に加えて、アジア連盟(AFC)加盟国・地域の
選手が1人出場できる制度で、J1では18チーム中11チームが活用。
オーストラリアの1人を除くと、残りは全員が韓国人選手。
李根鎬(イ・グノ)が活躍する磐田など、恩恵を受けるクラブも多い。
日本人選手育成への影響を懸念する声や、
リーグがもくろむアジアでのマーケット拡大という課題も残る。

◆チーム躍進の力

リーグ開幕後の4月に移籍した磐田の李根鎬(イ・グノ)は、
これまで6試合で計6得点。
一時は最下位に低迷していたチームを、9位まで押し上げる原動力。
「いい獲得だった」と吉野社長。
アジア枠のおかげで、外国人枠に一つ空きがあり、
今後の補強にも余裕が生まれた。

李正秀(イ・ジョンス)を獲得した京都は、外国人枠の4人全員が
11試合中9試合でベンチ入り。
高間テクニカルディレクターは「うまく制度がはまった。韓国人選手は、
ブラジル人らに比べて言葉を覚えるのが早い。DFはその点も重要」

ガ大阪のチョ・ジェジンと朴東赫(パク・ドンヒョク)は、
クラブにとって初の韓国人選手。
ブラジル人以外の外国人選手がいなかった鹿島も、
鈴木強化部長が「アジア枠というより、競争に加わってほしい
一人の若手という感覚で獲得した」という朴柱昊(パク・チュホ)が加入。
山形の金秉析(キム・ビョンスク)も、台風の目となったチームを支える。

大宮の朴原載(パク・ウォンジェ)、横浜マの金根煥(キム・クンファン)、
新潟のチョ・ヨンチョル、神戸の金南一(キム・ナミル)ら、
各年代で代表を経験した選手が活躍。

アジア枠導入前から、多くの選手がJリーグで結果を出している
安心感に加え、代理人らとのつながりもあり、
必然的にクラブの選択は、韓国人選手に偏っている。

現在は、アジア枠選手のいない大分も
「開幕時点では考えていなかったが、現実味を帯びてきた」(原強化部長)、
最下位と苦しむチームの活性化に、制度活用も視野に。

名古屋の久米GMは、「アジア枠を使うくらいなら、若手を使う」と、
消極的な態度。
浦和の信藤チームダイレクターも、「制度があるから使うという考えはない。
今はチームの土台を作る時。必要があれば使う」

◆日本人の出番減る

「まるで、韓国代表をトレーニングしているようなリーグになっている」
岡田監督が冗談交じりにもらした。
「そういう中で、日本の選手は勝たないといけない」と付け加えたが、
アジア枠の導入当初から、出場機会を奪われる日本人選手への影響を
懸念する声はあった。

ガ大阪の山本強化部長は、「強化の面でプラスではない。
選手は、厳しいゲームの中でプレーして育つ」
神戸の安達社長は、「外国人枠を含め、もっと拡大してもいい」という立場。
生き残った選手なら、世界でも通用する。
J1で争いに負けた選手も、J2で鍛えればいい。
そうすればJ2の魅力も増す」

◆放映権販売、開拓道半ば

アジア枠導入の目的の一つに、アジア全体の底上げがある。
注目が高くなっているアジア・チャンピオンズリーグは、
Jクラブが2連覇中だが、日本だけが抜きんでても強化は行き詰まる。
期待されたオーストラリアからの新たな移籍はなく、今のところ広がりはない。

大きな狙いは、アジアへの市場拡大。
「Jリーグの放映権がアジア各国に売れれば、大きな収入源。
景気が停滞する中、国内だけでは限界もある」とリーグ側。
欧州リーグが、新たなマーケットとしてアジアに進出してくるのを、
黙って見ているわけにはいかない危機感も。

ガ大阪が、韓国に放映権の購入を持ちかけるなどしている程度で、
開拓はまだこれからの状況。

http://www.asahi.com/sports/fb/OSK200905120011.html

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