2009年5月22日金曜日

検証 橋下改革(8)「就職力」実習で上げる

(読売 5月19日)

社会に出るため、学力以外にも教えるべきことがある。

4月下旬。初芝立命館高校の図書室で、
1年生約30人がプリントに向かった。
質問は、「10年後の自分の仕事」
北宏志教諭が、「書けた人は」と問いかけたが、手を挙げたのは2人だけ。

「意外と書けないよね」と助け舟を出したのは、
情報・人材サービス会社「リクルート」の笠正太郎さん(30)。
高校生の進路サポートを手がける立場から、
「書けないことに気づくのが大事。それが次へのステップ」と励ました。

授業は、大阪府が今年度から始めた「キャリア(職業)教育」の第1段階。
生徒らは、106の職種と94の学問分野への適性を測る
リクルートの自己診断テストを受け、働いている人の話を直接聞く
ワークショップや就業体験に参加。
1年間かけて、社会への〈入り口〉となる仕事の実像を学ぶ。

府がこうした事業を始めるヒントにしたのは、
作家・村上龍さんの著書「13歳のハローワーク」
興味や関心の先に、どのような仕事があるのかを知ってもらい、
進路選択に生かしてもらう考え。

初年度は、府立・私立計10高校が参加。
初芝立命館高校の薮内美佐・進路部長は、
「偏差値で大学を選び、進学後に後悔する生徒を減らしたい」と力説。
府立西成高校も、「安易に就職先を選ばないよう、
様々な仕事に触れさせたい」と成果を期待。

就職を支援するための検討も始まる。
「いらっしゃいませ」。
服飾メーカー「ワールド」(本社・神戸市)が、大阪・キタの阪神百貨店内に
展開する店舗で、太田有美さん(20)が笑顔で買い物客を出迎えた。
上田安子服飾専門学校の3年生。
ワールドの社員になることを目指し、
先輩社員の背中を見ながら実習に励む。

在籍する同校ストアマネージメント学科は、ワールド系列の店舗で
3年間実習を積めば、同社の正社員として採用される制度を取り入れた。
太田さんは、理学療法士の資格を取得できる大学を目指していたが、
この制度を知り服飾の道に進んだ。
「興味があっても、先が見えなければ、思い切れなかったかもしれない」

府は、こうした就職に直結する取り組みに着目。
他の専門学校や企業に呼びかけ、
若者の支援モデルとして他業者に広げていく考え。

橋下徹府知事がキャリア教育に力を入れるのは、
「学力偏重」という批判への“反論”でもある。

背景には、府内の高校生の厳しい現状がある。
中退率は、5年連続で全国1位。
高校卒業後、進路未定者の割合(6・8%)も、全国平均を上回る。

「英数国理社がすべてではない」
橋下知事の持論を具現化するため、〈就職力〉向上の取り組みが進む。

◆13歳のハローワーク

2003年に出版、ベストセラーになった作品。
子ども向けに514種類の仕事を紹介。
「花や植物が好き」、「音楽が好き」など興味や関心に応じて
職業を探すことができる。
インターネット上には、内容を拡充した公式ホームページもある。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090519-OYT8T00286.htm

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