(読売 5月10日)
電気抵抗がゼロになる超伝導現象。
東京工業大の細野秀雄教授は、鉄は超伝導になりにくいという
常識を覆し、鉄が主成分なのに絶対温度26度(零下247度)で
超伝導になる物質を開発。
論文を昨年2月に発表し、世界的な研究ブームの火付け役になった
細野さんは、研究室でインターネットをのぞくのが憂うつだった。
毎日のように、新しい鉄系の物質の合成と超伝導温度の
記録更新の報告があった。
昨年6月には、成果報告の数が17件にのぼった日も。
多くは、中国のグループによるもの。
超伝導になる温度が高いほど、利用しやすくなる。
現在、鉄系で最高の超伝導温度は、
中国・浙江大が達成した絶対温度56度。
中国科学院は、新タイプの鉄系物質を発見。
競争相手の米国の大学でも、中国人の教授や学生が研究の中核を担う。
中国が、科学技術分野で存在感を増している。
研究者数は日本の1・7倍、研究開発費も、購買力平価換算で
日本の6割まで増えた。
研究の質も向上が著しく、アジアで初めて自国民のゲノム(全遺伝情報)を
解読したのも中国。
米プリンストン大の有名教授が好条件の引き留めをけって、
清華大医学院副院長に就任するなど、
海外で活躍する人材が、中国に戻るケースも増えている。
日本の科学技術論文。
1991~95年の共著者の相手国で中国は6位だったが、
2001~05年になると米国に次ぐ2位、材料科学分野では1位。
清華大の招聘教授を15年務める
紺野大介・創業支援推進機構理事長によると、
中国のトップ研究者は、日本を超える水準に達している。
「援助する、優秀な人材を集めるという感覚はもう通用しない。
科学を一緒に切り開く気持ちで連携することが大切」
昨年12月、「中国の科学技術力について」をまとめた
林幸秀・宇宙航空研究開発機構副理事長も、
「中国は、10年で日本に追いつき、20年で米国を追い越す。
脅威論を振りかざすのは不毛」
林さんには、内閣府政策統括官時代に苦い思い出がある。
国際熱核融合実験炉の誘致を欧州と争ったが、
最終的に全体の40%の資金を負担することになった
アジアが一つにまとまらず、欧州に敗れた。
日本の産官学のリーダーたちは、日米欧は対等と思い張り合ってきたが、
もはや単独では限界。
林さんは、「日本と中国が核になり、東アジアが一体となって
科学技術を進める必要がある」
今後10年が、中国との結びつきを深めるチャンスとみる。
http://www.yomiuri.co.jp/science/tomorrow/tr20090510.htm
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