(読売 5月12日)
シカゴ市内の高級ホテルで、招致委員会の幹部が弧を描くように
座席を埋め、IOC評価委のメンバーと向かい合っている。
現地調査初日の冒頭、招致委は1本のビデオを流した。
「大統領として、それだけでなくシカゴの人間としても、みなさんを歓迎します」
画面の中で、地元出身のオバマ米大統領が熱っぽく語りかけていた。
評価委の調査対象は、実施計画や財政状況など、開催能力面のみ。
シカゴは、スポーツ大国でもある米国の都市として、
東京など他の3都市には比肩できない知名度の、
招致の「顔」に事欠かない点を、随所で巧みに織り交ぜた。
4月5日、バスケットボールや体操などが行われる会場の視察。
評価委が観客席に姿を見せると、NBAのシカゴ・ブルズで
黄金時代を築いたマイケル・ジョーダンさんが、
大型スクリーンに映し出され、歓迎のメッセージを送った。
「白い妖精」と呼ばれた体操女子金メダリストのナディア・コマネチさんが、
ジュニア選手による実演を指揮し、評価委に笑顔を振りまいた。
招致委は、「参加選手の9割が、選手村から15分以内で
競技場に移動できる」とコンパクトな会場配置をアピール。
コマネチさんの口添えは間違いなく、説得力の補強に。
「体操選手は試合本番まで1日に2度、調整練習をする。
選手村の中に練習会場があり、移動の負担を考えても、安全面でも、
シカゴの計画は素晴らしい」
シカゴは候補都市で唯一、大会収支が赤字に陥った場合の
財政保証を、政府から得ていない。
招致委はメディアから問われるたび、
「シカゴ市が5億ドル(約500億円)、イリノイ州が2億5000万ドルの
予備費を計上し、これで十分な保証になる。
我々は既存の施設を多く利用する計画で、予備費は必要にならない」
(デイリー市長)と強調。
裏を返せば、懸案は解消する必要はないと、開き直ったようなもの。
今後、五輪開催の意義などを訴える過程で、招致活動の「顔」の存在も、
よりクローズアップされていく。
シカゴは弱点を吹き飛ばすため、どんな「顔」を用意するのだろう。
招致関係者の間では、「オバマ大統領は、開催都市を決める
10月のIOC総会へ足を運び、最後の一押しをしてくれるはずだ」
との見通しが飛び交っている。
◇
2016年夏季五輪招致に立候補している4都市の開催能力を評価する、
国際オリンピック委員会(IOC)評価委員会(ムータワキル委員長)が、
4月上旬からシカゴ、東京、リオデジャネイロ、マドリードの順に行って来た
現地調査を先週終え、結果の分析に着手。
各都市は、評価委に何をアピールしたのか?
東京と比較した長所と短所は、どこにあるのか?
ライバルたちの現状を検証する。
http://www.yomiuri.co.jp/sports/feature/syouchi/sy20090512_01.htm
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