(読売 7月25日)
子どもに世界とのつながりを感じてもらうよう、努力している学校。
大阪市立南高校のゼミナール室で、1年生9人が
「ケニア人生すごろくゲーム」に興じていた。
マラリアや栄養失調、失業などのマス目に止まる度に、1回休みになる。
「また失業した」、「休みがやたら多いな」
ゲームは、地理Aの授業の一部。
「ケニアでは、小学校を中退するのも普通だし、貧しさからスラムで
犯罪に巻き込まれることもある。
未来が断ち切られてしまうことこそが、貧困やねんで」
すごろくを考案した辻良隆教諭(51)が狙いを説明すると、
生徒たちは一変して神妙な顔つきに。
一人一人に、アフリカの国名が書かれたカードが配られ、
それぞれどうやったら幸せになれるのか、3学期にリポートを提出。
徳田鮎美さん(16)は授業後、「日本で当たり前な事も、
家庭環境で左右されてしまう厳しい世界。
もっと深く知りたいと思った」と感想。
辻教諭が授業を始めたのは、2003年度、国際協力機構(JICA)の
研修で、ケニアを視察したことがきっかけ。
以後、持続発展教育(ESD)の考え方を取り込んだ
国際理解教育を実践。
「日本の物差しが通用しない世界があることを知り、
自分の問題として考えられることが大事」
難しいのは、アフリカの国々を身近に感じてもらうこと。
授業では何度も、自分自身の体験を交えるようにしている。
「ゲームをやって、『アフリカは大変だね』で終わらせたくない。
その国の人の気持ちになって、貧困解決に向けて学んでいくことで、
地球市民として生きる力を育みたい」
持続発展教育の実践は、海外事情を知ることだけではない。
三重県伊勢市立五十鈴中学校は、生徒が地元の特産品
「松阪木綿」で作ったきんちゃくやコースターなどを販売し、
利益をカンボジアの地雷除去のために活動しているNPOに寄付。
商品製作から販売までを、架空の企業「株式会社いすず」が
行う設定にしているのが特徴。
良い製品を安い価格で消費者に提供し、利益を寄付することで
企業の社会的責任や持続発展教育の概念を体験。
社長役を務める家庭科の西村朱美教諭は、
「企業はもうけるだけ、と思っていた生徒にとって驚きだったようだ」
昨年は、学校の活動を知った靴メーカーの協力で、
松阪木綿を表地に使ったスニーカーを製作してもらい販売。
今年は、南青山で開かれた「チャリティーアート展覧会」に
出展するなど活動が広がっている。
「自分たちの活動が地域から東京、そして世界に広がっていくことで、
自分が一人で生きていないこと、他人に支えられて生きていることを
感じてほしい」と西村教諭は期待。
◆持続発展教育(ESD)
環境保全や貧困の克服、差別の撤廃など、将来に損失を与えずに
現在の社会づくりを行う考え方を教えること。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090725-OYT8T00259.htm
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