2009年8月8日土曜日

学びの情報基地(2)美術館「体験型」に活路

(読売 7月30日)

いかに市民に足を運んでもらうか、
西洋美術館の草分けが試行錯誤を続けている。

「スイレンには、温帯スイレンと熱帯スイレンがある」
柳並木の水路沿いに、小粋な飲食店や雑貨店が軒を連ねる
岡山県倉敷市の「美観地区」。
大原美術館で、ワークショップ「倉敷を知る 植物のかたち」開催。

庭園で植物を観察し、パリ郊外にある画家モネの庭の池から
株分けしたというスイレンの池を眺め、館内でモネの「睡蓮」など
絵画に描かれた植物を見る。
近くの市立自然史博物館から講師を招いての、一風変わった試み。

この日の昼過ぎ、小学生向け行事の案内役として今年導入された
「ジュニア・アテンダント」の養成講座が開かれ、
大学生と高校生計27人が、作品の魅力をわかりやすく伝える
練習に取り組んだ。

8月下旬、「チルドレンズ・アート・ミュージアム」も予定。
子どもや市民にダンスを楽しんでもらったり、
彫刻と遊んでもらったりする、全館を挙げた参加体験型イベント。

グレコ、マティス、棟方志功ら、名だたる作品の収蔵・展示で
知られる同美術館で、教育普及活動が盛んに行われている。
理由について、学芸課長の柳沢秀行さん(42)は、
「ここはもともと、素晴らしい作品を集めて、
市民に見せることを前提に始まった」

同美術館は1930年、実業家の故大原孫三郎氏が、
画家の児島虎次郎を支援、その収集作品を市民に公開するため、
国内初の西洋美術館として開設。

高度成長期やバブル経済期には県外客でごった返し、
88年の瀬戸大橋開通時には、有料入場者は年間120万人。
柳沢さんによると、この時に地元の客が離れてしまい、
ブームが去るに従って入場者数が激減。

反省から、小学校を無料で招待する「小学校まるごと美術館」や、
年間約4000人の未就学児無料受け入れなどの教育普及事業を
拡充し、数年前からは10年、20年後の同美術館を
共に支える学生への浸透に力を入れる。

「知識と理屈を持った大人に、どうアプローチしていくか、
試している最中」と柳沢さん。
昨年度の有料入場者数は約34万人、高階秀爾・四代目館長(77)は
「中高生や20、30歳代の若者の利用者が増え始め、手応えを感じる」

大原謙一郎理事長(68)は、「客集めの企画をやれば、
入館者は増えるだろうが、受け継がれてきた
『価値と風格を持ち主張する美術館』の志は譲れない」と強調。

ボランティアの観光ガイド萩原やす代さん(61)は、
「昔の専門的な展示に比べ、かなり分かりやすくなった」

来年は開館80周年。
社会貢献の先頭を切ってきた老舗美術館の奮闘が注目。

チルドレンズ・アート・ミュージアムは、8月22、23日に開かれ、
小中学生は入館料が半額(250円)。
大原美術館((電)086・422・0005)。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090730-OYT8T00218.htm

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