2009年8月5日水曜日

市民力を鍛える(8)臓器提供学び 命考える

(読売 7月28日)

臓器提供を行う意味を、授業で教える学校が増えている。

新潟県上越市の市立頸城中学校に、
同県臓器移植コーディネーターの秋山政人さん(43)が出前授業。
2年生14人に、名刺大のカードを配る。
「これは、皆さんの権利を尊重する大切なものです」

臓器提供意思表示カード。
「自分が脳死になったら、臓器を提供したい」との意思を
生前に残す、一種の遺言書。
秋山さんは、病院で脳死になった人がカードを持っていれば
駆け付け、家族に意向を尋ねる。

「脳死というのは、心臓は動いているけど、頭が死んでしまった状態」
授業では、パソコンで図を見せながらやさしく説明。
「世の中にはこんなこともあるんだなって程度でも、
理解してもらえればうれしい」と締めくくった。

秋山さんが働く同県臓器移植推進財団は、
出前授業を2年前に始めた。
現行の臓器移植法では、臓器提供できるのは15歳以上。
「中学生から移植について知ってもらいたい」と、
中学・高校延べ12校に出向いてきた。
同様の講師派遣は、栃木、茨城県などでも行われている。

15歳を迎える中学3年生への啓発のため、
厚生労働省は2004年度、パンフレットを作り、
毎年全国の中学校に送っている。
中学の学習指導要領は、臓器移植の授業まで求めておらず、
どの教科で教えるかも学校任せ。

同省が行ったアンケートによると、パンフを配るだけの学校が約7割。
「生命倫理の話は難しく、学校もどう教えていいか迷っているのでは」と
峰村芳樹・同省臓器移植対策室長。

トキワ松学園中学・高校では、「いのちの教育」の授業の一環として
臓器移植を取り上げている。
2000年から、中1~高2の保健で、人間の誕生、病気、老い、死の
「生老病死」を学び、臓器移植は高2で3か月間勉強。
佐藤毅教諭(35)は、「臓器移植の教育は、
保護者にも賛否両論あるので、いきなり『死』を教えるのは避けた。
まず『生』から学ばせ、いろんな意見を認め合う形にした」

生徒には、家族と話し合うよう指導。
高3の河南華さん(17)は、「母も私も、自分が脳死になったら
臓器提供したいけど、家族の提供には反対という意見だった」

小学4、5年生に、保護者と一緒に臓器移植を学ばせる学校。
長崎県諫早市の市立みはる台小学校の山下泰子教諭(47)は、
移植患者や大学病院の医師らを講師に招き、
親子で「命の大切さ」を考えるきっかけを作っている。

「親も子どもの死など考えたくはない。
でも万が一の時、本人の思いを尊重してあげられるように、
日頃から話し合ってもらいたい」と山下教諭。
命は、自分だけのものではないことを理解させるための教材として、
臓器移植が活用されている。

◆臓器移植法

脳死者から臓器が提供される要件などを定めた法律。
1997年施行の現行法の運用指針は、提供できる年齢を
15歳以上と定めたが、乳幼児が国内で移植を受けられない問題。
今月13日に改正法が成立、年齢制限を撤廃。
改正法は来年7月に施行、15歳未満も家族の同意があれば
臓器提供できるようになる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090728-OYT8T00239.htm

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