(読売 7月28日)
臓器提供を行う意味を、授業で教える学校が増えている。
新潟県上越市の市立頸城中学校に、
同県臓器移植コーディネーターの秋山政人さん(43)が出前授業。
2年生14人に、名刺大のカードを配る。
「これは、皆さんの権利を尊重する大切なものです」
臓器提供意思表示カード。
「自分が脳死になったら、臓器を提供したい」との意思を
生前に残す、一種の遺言書。
秋山さんは、病院で脳死になった人がカードを持っていれば
駆け付け、家族に意向を尋ねる。
「脳死というのは、心臓は動いているけど、頭が死んでしまった状態」
授業では、パソコンで図を見せながらやさしく説明。
「世の中にはこんなこともあるんだなって程度でも、
理解してもらえればうれしい」と締めくくった。
秋山さんが働く同県臓器移植推進財団は、
出前授業を2年前に始めた。
現行の臓器移植法では、臓器提供できるのは15歳以上。
「中学生から移植について知ってもらいたい」と、
中学・高校延べ12校に出向いてきた。
同様の講師派遣は、栃木、茨城県などでも行われている。
15歳を迎える中学3年生への啓発のため、
厚生労働省は2004年度、パンフレットを作り、
毎年全国の中学校に送っている。
中学の学習指導要領は、臓器移植の授業まで求めておらず、
どの教科で教えるかも学校任せ。
同省が行ったアンケートによると、パンフを配るだけの学校が約7割。
「生命倫理の話は難しく、学校もどう教えていいか迷っているのでは」と
峰村芳樹・同省臓器移植対策室長。
トキワ松学園中学・高校では、「いのちの教育」の授業の一環として
臓器移植を取り上げている。
2000年から、中1~高2の保健で、人間の誕生、病気、老い、死の
「生老病死」を学び、臓器移植は高2で3か月間勉強。
佐藤毅教諭(35)は、「臓器移植の教育は、
保護者にも賛否両論あるので、いきなり『死』を教えるのは避けた。
まず『生』から学ばせ、いろんな意見を認め合う形にした」
生徒には、家族と話し合うよう指導。
高3の河南華さん(17)は、「母も私も、自分が脳死になったら
臓器提供したいけど、家族の提供には反対という意見だった」
小学4、5年生に、保護者と一緒に臓器移植を学ばせる学校。
長崎県諫早市の市立みはる台小学校の山下泰子教諭(47)は、
移植患者や大学病院の医師らを講師に招き、
親子で「命の大切さ」を考えるきっかけを作っている。
「親も子どもの死など考えたくはない。
でも万が一の時、本人の思いを尊重してあげられるように、
日頃から話し合ってもらいたい」と山下教諭。
命は、自分だけのものではないことを理解させるための教材として、
臓器移植が活用されている。
◆臓器移植法
脳死者から臓器が提供される要件などを定めた法律。
1997年施行の現行法の運用指針は、提供できる年齢を
15歳以上と定めたが、乳幼児が国内で移植を受けられない問題。
今月13日に改正法が成立、年齢制限を撤廃。
改正法は来年7月に施行、15歳未満も家族の同意があれば
臓器提供できるようになる。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090728-OYT8T00239.htm
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