2009年10月15日木曜日

農業に学ぶ(8)農村の再生 現場実習

(読売 10月3日)

農学部の学生が、農村に飛び出した。

ビニールハウスには、収穫期を迎えたトマトが並んでいた。
愛媛県の中央に位置する久万高原町。
着古した作業着姿の愛媛大学2年、日野輝将さん(19)が、
ひもで茎を支える作業を手際良くこなしていた。

「トマトが病気になりそうか、弱っていないか。
見逃さないように集中する」と、真剣なまなざしで話す日野さんは、
同大農学部の農山漁村地域マネジメント特別コースの1期生。

同コースは、農山漁村の再生を担う人材育成に特化し、
昨年度から始まった。
地域学や起業論などの講義と並び、農家やJAといった現場や
関係団体での実習を、計34週間も組み込んでいるのが特徴。
今年は、2年生となった同コースの1期生たちが、
本格的な現場実習に初めて参加。
10人が6月から6週間、週5日、県内の農家などに通い、
農作業の手伝いをしたり地域の農家の交流会に参加。

日野さんを受け入れた農家の山之内章さん(45)は、
「農家のありのままの姿を見てほしい」と、
経営状態も隠さず伝えた。
同町出身の日野さんは、「寂れていく地元を何とかしたいと、
このコースを志望した。
生産や流通の課題が具体的に見えてきた」と手応えを感じた様子。

疲弊する地域にどう貢献できるか?
人材育成という大学の使命から考えた」と、
制度設計した前農学部長の泉英二・副学長(62)。
「誇りを持って地域に住み、農家でも役所でも企業でも、
内部から革新できる人材に育ってほしい」と期待。

静岡市葵区の山の急斜面に連なる茶畑。
静岡大学農学部1年の鈴木良子さん(18)が、
黙々とクワで土を掘り起こしていた。
「しっかり育つように掘り起こさないと」と額の汗をぬぐった。

静岡大は、2007年から学生が中山間地域の解決策を探る
「農業環境教育プロジェクト」を進めている。
土日や長期休みを中心に、3年間で約30日、
農村に泊まり込んで生活。
茶摘みなどの農作業を手伝い、運動会などに参加する中、
地域の課題を考える。現在、1~3年73人が参加。

学生が訪れる大代地区は、標高700メートル超の山間部に
12世帯45人が住み、その多くは50歳代以上。
こうした過疎地区が抱える問題について、
「炉ばた環境ゼミ」と題した勉強会も開かれ、
住民、教員、行政担当者らと議論。

担当する鳥山優教授(51)は、
「手間をかけて茶を育てても、農家が価格を決められない
現実を知る。中山間地域の問題はどこでも同じ。
ここでの経験が将来生きるはずだ」と期待。

研究が細分化し、原点である農業から離れていった農学部が、
再び農村と向き合い始めた。

◆農山漁村地域マネジメント特別コース

1学年の定員は10人。
地域を担う意欲がある者を要件にAO方式で選抜。
農業高校の元教員や元市役所職員など、
大学畑ではない教員陣が特徴。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091003-OYT8T00258.htm

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