(読売 10月3日)
農学部の学生が、農村に飛び出した。
ビニールハウスには、収穫期を迎えたトマトが並んでいた。
愛媛県の中央に位置する久万高原町。
着古した作業着姿の愛媛大学2年、日野輝将さん(19)が、
ひもで茎を支える作業を手際良くこなしていた。
「トマトが病気になりそうか、弱っていないか。
見逃さないように集中する」と、真剣なまなざしで話す日野さんは、
同大農学部の農山漁村地域マネジメント特別コースの1期生。
同コースは、農山漁村の再生を担う人材育成に特化し、
昨年度から始まった。
地域学や起業論などの講義と並び、農家やJAといった現場や
関係団体での実習を、計34週間も組み込んでいるのが特徴。
今年は、2年生となった同コースの1期生たちが、
本格的な現場実習に初めて参加。
10人が6月から6週間、週5日、県内の農家などに通い、
農作業の手伝いをしたり地域の農家の交流会に参加。
日野さんを受け入れた農家の山之内章さん(45)は、
「農家のありのままの姿を見てほしい」と、
経営状態も隠さず伝えた。
同町出身の日野さんは、「寂れていく地元を何とかしたいと、
このコースを志望した。
生産や流通の課題が具体的に見えてきた」と手応えを感じた様子。
「疲弊する地域にどう貢献できるか?
人材育成という大学の使命から考えた」と、
制度設計した前農学部長の泉英二・副学長(62)。
「誇りを持って地域に住み、農家でも役所でも企業でも、
内部から革新できる人材に育ってほしい」と期待。
静岡市葵区の山の急斜面に連なる茶畑。
静岡大学農学部1年の鈴木良子さん(18)が、
黙々とクワで土を掘り起こしていた。
「しっかり育つように掘り起こさないと」と額の汗をぬぐった。
静岡大は、2007年から学生が中山間地域の解決策を探る
「農業環境教育プロジェクト」を進めている。
土日や長期休みを中心に、3年間で約30日、
農村に泊まり込んで生活。
茶摘みなどの農作業を手伝い、運動会などに参加する中、
地域の課題を考える。現在、1~3年73人が参加。
学生が訪れる大代地区は、標高700メートル超の山間部に
12世帯45人が住み、その多くは50歳代以上。
こうした過疎地区が抱える問題について、
「炉ばた環境ゼミ」と題した勉強会も開かれ、
住民、教員、行政担当者らと議論。
担当する鳥山優教授(51)は、
「手間をかけて茶を育てても、農家が価格を決められない
現実を知る。中山間地域の問題はどこでも同じ。
ここでの経験が将来生きるはずだ」と期待。
研究が細分化し、原点である農業から離れていった農学部が、
再び農村と向き合い始めた。
◆農山漁村地域マネジメント特別コース
1学年の定員は10人。
地域を担う意欲がある者を要件にAO方式で選抜。
農業高校の元教員や元市役所職員など、
大学畑ではない教員陣が特徴。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091003-OYT8T00258.htm
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