2009年10月12日月曜日

農業に学ぶ(6)田舎に宿泊 たくましく

(読売 9月30日)

小学生全員に農山漁村を体験してもらう試みが、
本格的に始まろうとしている。

「うわっ、痛っ」
ナスのとげが指に軽くささり、男の子が声を上げる。
新潟県上越市安塚区の農業滝沢恵さん(66)の畑で、
横浜市立中川西小学校の男子児童4人が、
ナスやキュウリを収穫。
4人は前夜、滝沢さん宅に泊まり、ぎこちなさもとれた様子。
青木祐輔君(12)は、「田舎の人は、助け合って暮らしている」

同小は、上越市でこの「越後田舎体験旅行」を始めて7年目。
今回は、6年生男女168人が参加。
1日目は、宿泊施設に団体で宿泊。
2日目はささだんご作り、ソバ打ちなどの食体験や山歩きの後、
メーンイベントの民泊。

3~4人ごとに、51軒に分泊。
夕朝食を一緒に食べ、田んぼや畑の作業を手伝ったり、
野山を見て回ったりした。
中田亘成君(12)は、「いつもゲームばかりなので、
野菜の収穫など面白かった。
お米も水もおいしいし、泊まった家の人は優しかった」

同行した渡辺文子校長(53)も、「昔ながらの人間関係のある地域で、
自然とともにコミュニケーションを学んでくれたのでは」

小学生が農山漁村に1週間程度、宿泊する政府の
「子ども農山漁村交流プロジェクト」の準備が進められている。
農家か漁家に最低1泊し、人間関係を築く力を
高めてもらおうというもので、2013年度開始が目標。

田舎での宿泊体験は、中川西小のように長年、独自行事として
取り組んできた学校も多い。
東京都武蔵野市は、1995年度から「セカンドスクール」として、
最長で9泊10日の生活体験学習を長野県などで実施。

同プロジェクトの本格開始に先立ち、08年度で178校、
09年度は現時点で約300校が試験的に参加。

今年7月、長野県飯田市で4泊5日の体験宿泊を実施した
横浜市立上大岡小学校では、親元を離れた生活で、
食事、言葉、トイレなどを心配する声。
実施後は、保護者から「自分のことが自分でできるようになった」、
子どもたちの成長ぶりを喜ぶ感想が集まった。

10年以上、子どもたちを宿泊させている上越市の
自営業中島勝義さん(66)は、
「子どもたちの声が響くのは楽しいし、いまだに連絡をくれる子もいる」

生活体験受け入れ実績が11年間に及ぶ
「越後田舎体験推進協議会」の小林美佐子事務局長(49)は、
「春に体験で来て、夏に家族で再訪してくれるケースも。
住民が減り、元気を失いつつある農村が活性化する」

費用面の問題点を挙げる声も多いが、
子どもたちのたくましい成長は、金には換えられない価値を持つ。

◆子ども農山漁村交流プロジェクト

文部科学省が小学校、農林水産省が受け入れ地域の農山漁村、
総務省が特別交付税措置などを担当。
体験に参加するのは、主に5年生の予定。
試行段階の5年間では、委託を受けた推進校の負担は
原則食費のみだが、本格実施以降は自治体の補助割合など、
地域により負担差が出る。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090930-OYT8T00207.htm

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