2009年10月17日土曜日

農業に学ぶ(10)都心で膨らむ就農の夢

(読売 10月7日)

朝に夜に、都心で農業を学ぶ講座が活況だ。

新丸の内ビル10階に、男女33人の受講生が集まった。
市民講座「丸の内朝大学」の農業クラス。
8割が女性で、スーツ姿の男性の姿も。

講師は、千葉県流山市で有機農業を営む笠原秀樹さん(35)。
「農家では、濃い付き合いができるが、給料は出ない。
農業生産法人は手当が充実しているが、一つの野菜しか
作っていない場合もある」など、農業の研修先の特徴を説明。

4月に開校した朝大学は、「出勤前の自分磨き」をテーマに、
男性向け家事、ヨガ、環境などユニークな講座から受講、
人気が高いのが農業クラス(全8回、3万8000円)。
春夏秋に開講、夏のクラスは、募集開始2日で定員35人が満員。

クラスの特徴は、全国の若手農業者らでつくる
「農家のこせがれネットワーク」の講師陣が、
農業を始めた経緯や収入、地域との付き合い方など
「生の農業」を語ること。
「本当に有機がいいの」、「女性農家から聞くお茶とキノコの話」
などのテーマで講演し、梨狩りもある。

「土いじりをしたいと思っている都会の人は実は多い」と、
企画した古田秘馬さん。
「こせがれ」の宮治勇輔代表(31)は、
「受講者と同じ目線を持つ若手農業者が、
基本的な生活スタイルから職業の魅力まで語るのが特徴。
誰でも入りやすいような内容になっている」

受講した契約社員宮原正美さん(34)は、
「若い農業者の前向きな話を聞き、農業のイメージが変わった」
就農を考え始めているという会社員佐藤千也子さん(34)は、
「同世代がやっている農業は、新鮮で身近に感じた。
具体的な話に就農のヒントをもらっている」

農業分野の人材づくりに取り組む人材派遣大手
「パソナグループ」は、2007年から
「Agri―MBA農業ビジネススクール農援隊」を開いている。

独立就農希望者や農業分野の起業を目指す人向けで、
4月から週1、2回の全30講座(14万円)。
農業経営者らが、流通販売などの事例を話す。
07年受講者は、予想を大幅に上回る55人。
08年75人、09年84人と増えている。
「地方からも参加したい」という要望を受け、
今年から授業のインターネット配信も始まった。

東京・銀座のビルで、ブランド豚などを手掛ける
農業経営者の講義があった。
会社帰りに受講している会社員梅村貴司さん(35)は、
「あこがれから就農したいと受講したが、
色々な農業経営者の話を聞き、自分の甘さを知った」
パソナ広報は、「将来的に農業にチャレンジしたい人に、
ビジネスとしての農業を学んでほしい」

ビルに囲まれた都心で、農業への夢が、現実に近づいていく。

◆農家のこせがれネットワーク

農家の活性化などに取り組む若手農業者らの団体。
「1次産業を、かっこよくて、感動があって、稼げる
3K産業にする」をキーワードとした新しい農業像を、
東京で働く農家の「こせがれ」や一般向けに発信。
農業体験ツアー、農学校などを展開し、
若い担い手の育成に取り組んでいる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091007-OYT8T00233.htm

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