2010年2月18日木曜日

電力10社体制はいつまで続くか?

(日経 2010-02-15)

東京電力と北海道電力が、北海道での風力発電拡大で協力、
2014年、東電が北電から風力発電による電力の買い取りを始める。

電力会社どうしが手を携え、温暖化ガス削減に取り組む
前向きな動きだが、見方を変えると、
「日本に電力会社が10社も必要なのか」という疑問。

東電は、東北電力とも同様の内容で事業協力を進める。
日本で、風力発電に適した地域を抱えるのは、北電と東北電。
両社の営業エリアにある風力発電設備は、日本全体のおよそ半分。

北海道では、良い風が吹こうとも、風力発電を増やすことができない。
北電の電力供給規模では、安定した電力品質を維持には、
風力発電設備の導入は36万kwが限界、26万kw分の設備が立地。
東電は、10~20万kw分の風力発電を北電から供給、
同等規模の風力発電の開発余地を北海道に生み出す。

北海道、東北、東京の各電力のエリアが、1社で運営されれば?
品質の不安定な風力発電の受け入れ量は一気に増え、
北海道と東北が抱えていた「風力ボトルネック」は解消に。

「低炭素社会対応」をキーワードに俯瞰してみると、
戦後から続いた電力10社体制の限界は他にも。

温暖化対策の最有力手段である原子力発電。
沖縄を除く9社が原発を運営、立地場所に制約があり、
各社の原発比率は格差が。

苦しいのが中部電力。
全発電設備に占める原発比率は1割程度、
3割程度の東電や関西電力に見劣り。

都道府県別風力発電ランキング(NEDO調べ、2009年時点)
 1位 青 森  277,100 kw   192基
 2位 北海道  258,485 kw   268基
 3位 鹿児島  136,505 kw   97基
 4位 秋 田  122,662 kw   103基
 5位 石 川   78,515 kw   56基
 6位 山 口   74,450 kw   37基
 7位 福 島   69,860 kw   43基
 8位 千 葉   68,150 kw   50基
 9位 茨 城   67,905 kw   46基
10位 長 崎   67,410 kw   60基
   日本全体 1,853,624 kw 1,517基

原発立地に適した地域に乏しい中部電の原発は、浜岡原発のみ。
原発比率が低いままでは、業界目標のCO2排出源単位を
クリアするには、排出権を購入する必要があり、財務体質に響く。
2000年、三重県芦浜地区での新設計画を断念して以降、
新規立地のめどはたたない。

関係者のあいだでささやかれる秘策は、北陸電力との経営統合。
志賀原発2基、190万kw分が手に入り、原発比率が上昇。
電力会社どうしの経営統合は、独禁法上の問題が障害、
供給区域が広がると、米国のように停電時のリスクが増す。
吸収される側の電力会社の強い抵抗もありそう。

「なぜ10社?」の疑問は、今後もさらに強まる。
風力発電など、再生可能エネルギーを手掛ける新興企業では、
電力の品質確保を理由に、受け入れ量を制限する
電力会社への不満が根強い。
「再生可能エネルギー導入量を増やすには、発送電分離が不可避」
温暖化ガス削減に熱心な民主党政権とどこかで結びついたら・・・。

電力会社が、最も敬遠する「発送電分離論議」を封じ込めるには、
電力会社どうしの連係やスマートグリッド(次世代送電網)の
構築などを通じ、再生可能エネルギー導入実績を積みあげる。
西日本では、太陽光の豊富な九州電力と関西電力などが協力、
太陽光導入に取り組むケースも。
再生可能エネルギー導入に取り組むほど、電力10社体制の
意味合いが薄れていくというパラドックスに陥りそう。

戦時体制下で発送電を独占していた日本発送電を分割し、
本州9社体制が発足してからおよそ60年。
日本経済が成長を続けてきた時代は、営業区域を分け、
需要地と電源を近接した電力供給は効率よく機能。

低成長下の低炭素社会対応で、制度疲労が目立ってきた。
電力会社が、「発送電分離」という最悪シナリオを回避したいなら、
10社体制に自らが風穴をあける覚悟が求められる。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan100212.html

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