2010年2月14日日曜日

健康食品との付き合い方:/2 機能表示、よく理解して

(毎日 2月10日)

健康食品の中でも、国が有効性や安全性を認めた
特定保健用食品(トクホ)の人気は高い。
現在約900品目もあり、消費者にすっかり定着。
表示の意味を正しく理解せず、過剰な効果を期待してはいないか?

<体に脂肪がつきにくい>と表示されている
日清オイリオの食用油「ヘルシーリセッタ」。
分子の鎖が短い中鎖脂肪酸を含むため、通常の油より
肝臓での分解が速く、脂肪として体内に蓄積しにくいのが特色。
摂取するだけで、すでにある体脂肪が減ったりするわけではない。
同社広報・IR部は、「あくまで通常の油に比べ、
体内で脂肪になりにくいという意味」と説明。

トクホ製品の中でも、代表的なヒット商品となった
サントリー「黒烏龍茶」には、<脂肪の吸収を抑える>。
この意味は、「脂肪の多い食事と一緒に飲むと、
食後の中性脂肪の上昇を抑えるということ」で、
「空腹時でも、中性脂肪が下がるというわけではない」(同社広報部)。

<血糖値が気になる方に>と表示されている
大正製薬の「グルコケア」は?
でんぷんの一種、難消化性デキストリンを配合し、
小腸での糖の吸収を穏やかにするが、大正製薬広報室は
「食事の時に飲めば、糖類の吸収が抑えられ、
食事30分後の血糖値が下がるという意味」。
血糖値の高い人が毎日飲んで、血糖値が下がるものではない。

適切な利用法を知らないと、思わぬ健康被害に遭う恐れも。
トクホなどの健康食品と薬の飲み合わせを詳しく解説した
「健康食品ポケットマニュアル」(416ページ)をまとめた
「健康食品管理士認定協会」(事務局・鈴鹿医療科学大学内)によると、
血糖値改善をうたうトクホ製品と血糖値を下げる医薬品を
同時に服用し、血糖値が下がり過ぎたとの症例報告。
糖尿病などの疾患がある人は、トクホを利用する際、
医師に相談したほうがいい。

加藤亮二・香川県立保健医療大学教授は、
「トクホは食品なので、あくまで健康な人が病気の予防目的で
利用すべきもの」
血糖値を下げる製品の場合、「太っていて、血糖値が気になるという人が、
時々摂取して血糖値を下げながら生活し、
糖尿病になるのを遅らせるという意義はある」

現実に、血糖値の高い人が、トクホを利用しているからという理由で、
つい肉類などを食べ過ぎ、食生活の改善を怠ってしまうというケース。
どんな人がどれだけ、どのくらいの期間摂取すればいいのかまで
表示されていればよいのだろうが、
加藤さんは、「服用期間まで表示すると、医薬品の領域に入ってしまう」、
健康食品の表示の難しさ。

商品によって、最低限度の注意書きが小さく記されていたり、
メーカーのホームページなどで詳しい説明がされている。
インターネットを使わないお年寄りや、「トクホは健康にいい」という
漠然としたイメージで利用している消費者には、
十分には伝わっていない。

<虫歯の始まりである脱灰を抑制し、歯を丈夫で健康にします>と
表示されたトクホのリカルデントガム(キャドバリー・ジャパン)。
小さなパッケージの脇に、<1日摂取目安量:2粒を同時に1日4回、
1回あたり20分間を目安にお召し上がりください>

蒲生恵美・目白大学講師が、学生約300人に聞いたところ、
このガムを食べている学生の多くが、
「1粒かむだけで効果がある」と勘違い。

トクホの望ましい利用法を、消費者にどう伝えていけばよいか?
蒲生さんは、まず「消費者が表示をきちんと確認することが大事」とし、
「メーカー側も、注意しなければならない持病のある人は
対象外とすることや、どういう試験で有効性が確かめられたか、
もっと分かりやすく示す必要がある」と提言。

◇制度見直しへ、国が有識者会議

トクホなど健康食品の表示を巡って、消費者庁が昨年11月から
有識者による検討会を設置し議論、今年度中に
トクホ制度の改正も含む論点を整理する方針。

検討会では、「有効性をうたって販売するすべての食品を網羅する
ルールを確立すべきだ」(全国消費者団体連絡会)、
「トクホは、機能性の表示があいまいで正しく伝わらず、改善すべき」
(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会)、
消費者団体から現行制度の見直しを求める意見。

業界団体の健康食品産業協議会も、
「健康食品全体を包括した枠組み作りが必要」、
見直し自体に目立った異論は出ていない。
何をどう見直すかといった具体的な方向性は、まだ定まっていない。

http://mainichi.jp/life/health/archive/news/2010/02/20100210ddm013100154000c.html

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