2010年4月23日金曜日

親と向き合う・2(1)要望の裏に「悩み」あり

(読売 4月16日)

都立葛飾特別支援学校の卒業式。
卒業証書を受け取る秀男さん(18)(仮名)の姿を見つめながら、
父親(52)は感慨深げに振り返った。
「信頼できる担任に出会えて、本当に良かった」

秀男さんの父親は、中程度の知的障害がある秀男さんの生後、
間もなく離婚し、男手一つで育ててきた。
「息子の自立には、より健常者に近い教育を」との思いから、
小中学校は普通学級に通わせた。

おのずと、求める内容は増えた。
宿題の出し方から授業の進め方まで、学校や教育委員会に出した
要望書は数知れない。
秀男さんは、中学卒業後は特別支援学校に進んだが、
今度は、息子にとって授業のレベルが低いなどの理由で、
クラス替えを求めた。

「担任は、『私は頑張っています』と言うだけ」と父親。
不信感は募るばかり。

秀男さんが2年に進級し、担任が変わったことが転機。
新たに担任になった久保田浩司教諭(44)は、
前任者からの引き継ぎで、秀男さんに要求の多い
父親がいることは知っていた。
「思いの丈を聴き、要望の裏にある悩みを見極めよう」と考えた。

父親の考えが、何ページも書かれた日々の連絡帳。
面談には、通常の4倍、約2時間かけたことも。
やがて見えてきたのは、息子の教育への重圧で、
心労が積もり積もった姿。
「無理をせず、共に歩みましょう」と声を掛けた。

昨年12月、連絡帳に「疲れました。
息子と心中するかもしれません」とSOS。
久保田教諭は、すぐに区役所に相談、
子どもを預ける保護施設を見つけた。

久保田教諭は、「きちんと話を聞き、難しい要求は周りに相談する。
その土台がしっかりしていれば、保護者との信頼関係は築ける」

学校に対する要求が多い親の問題は、
「モンスター・ペアレント」として、過激さが注目された段階を過ぎ、
真意を読み取り、解決策を模索する新たな段階を迎えた。
研究も少しずつ始まって、日本大学の佐藤晴雄教授(社会教育学)は、
苦情を「正当系」、「学校依存系」、「わが子中心系」、「イチャモン系」に
分け、分析を試みている。

4月は、教師が子どもや保護者と関係を築く上で大切な時期。
年度末に掲載されたシリーズ「親と向き合う」に寄せられた
情報や感想をもとに、現場の実践を再考する。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100416-OYT8T00258.htm

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