2010年4月20日火曜日

ボールがつなぐ支援の輪 JFA特任理事・北沢豪 (上)

(日経 2010/4/13)

ソニーと国連開発計画(UNDP)、国際協力機構(JICA)が
共同で開いた記者会見。

JICAのオフィシャルサポーターとして同席した、
サッカーの元日本代表、日本サッカー協会(JFA)特任理事の
北沢豪は、静かに喜びをかみしめていた。

「これまでやってきたことが積み重なって、
点から線になった気がする。小さくても、幸せを感じますね」

サッカー・W杯南アフリカ大会の期間中、カメルーンの3都市、
ガーナの9都市で、パブリックビューイングを行う。
北沢も、その計画の一員として現地に飛ぶことに。

ただの上映会ではない。
会場では、エイズ予防のための寸劇やカウンセリング、検査も実施。
この手の硬い集会に、なかなか人が集まりにくいが、
W杯がライブで見られるとなれば、話は別。

両国とも、テレビ普及率は20%台前半と低い。
200インチ大画面の力を借りて、計20試合の上映で、
1万3000人の集客と1800人の検査を目指す。

JICAの押山和範アフリカ部長は、
「アフリカでは、エイズという病気があることすら知られていない。
認知のさせ方には、それぞれの地域に合ったやり方がある。
アフリカでは、サッカーと組み合わせるのが有効」

北沢は、下見を兼ねて3月にカメルーンを訪ねた。
「100%の国民がサッカー好きというか、ボールがあると、
人がどっと集まってくる。
日本とW杯で対戦することも知っていた。
サッカーに関しては、本当に誇り高い。
欧州にサッカーを教わったというより、
自分たちが欧州のサッカーを発展させた、
というプライドをびしびし感じた」

今回のプロジェクトに、耐久性に優れた“アフリカの大地仕様”
特製ボールの配布が含まれることも、うれしい。

2001年、カンボジアを手始めに、
「アジアの子供たちにボールを届けるプロジェクト」
ずっと携わってきた。
様々な名目で、これまでに15カ国を計22回訪ね、
アフリカではザンビアとセネガル、南アフリカ、カメルーンを訪れた。

なぜ、ボールを届けることにこだわるのか?
現地の人たちに、本当に喜ばれるから。
新品である必要もない。
むしろ使っていた子供の名前が書いてあるようなボールの方が、
どういう経緯でここに来たか説明できるし、
受け取る側も何かを感じてくれる。
ボールと一緒に込められたメッセージも届けられる。
翌年、同じ場所に行ってボールがしっかり管理されているのを見ると、
気持ちや意味も伝わったんだなあと、うれしくなる」

10年続けるうちに、支援の輪は広がった。
「アジア、南米、アフリカの子供たちと交流してきて、
今回W杯がアフリカで開かれるのも、何かの縁に思える。
W杯が、アフリカの人々に大きな夢を与えるのは間違いない。
一人ひとりの感動がつながって、それが国を動かす力になり、
アフリカ全体の発展につながってくれたら」

北沢にとって、ボールはただのモノではない。
人と人をつなぐ、力の起点そのものなのである。

http://www.nikkei.com/sports/column/article/g=96958A96889DE2E7E4E7E0E4E7E2E3E1E2E6E0E2E3E28781E2E2E2E2;p=9694E0EBE2E3E0E2E3E2E1EBE3E1

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