2010年5月21日金曜日

広島の「黒い雨」の研究を続ける広島大教授の星正治さん

(2010年5月12日 共同通信社)

「多くの証言を科学的な形で裏付けるのは、
広島の研究者としての使命と思いながら続けた」

原爆の「黒い雨」に由来するとみられる放射性物質を、
広島市郊外の土壌から検出、当時の被ばく線量が、
最大で爆心地から約2・1km、
直接被爆したレベルに匹敵すると推定。
投下から64年が過ぎても、不明な部分が多い、
黒い雨の実態解明につながる貴重な成果。

宮崎市に生まれ、大阪大で原子核物理を専攻。
1980年、広島大原爆放射線医科学研究所に助手として
採用されたのを機に、放射線被ばくを研究テーマに。
広島市内や旧ソ連の核実験場周辺の村で収集した
れんがや樹木を分析、爆発後、急速に弱まった放射能が残した
かすかな痕跡から、当初の放射線量を復元する試みを続けてきた。

「遺留品から犯人をたどる事件捜査」に例える地道な作業は、
冷戦下の核実験で、世界中に拡散した放射性降下物の影響に
阻まれ難航。
終戦直後に建てられた住宅の床下の土から、
黒い雨の"物的証拠"をようやく探し当て、
30年越しの悲願をようやく達成。
「研究の蓄積と、幸運に助けられた」と控えめに喜ぶ。

医療や発電など、放射線と生活とのかかわりが増す一方の現代社会。
すべての人が、基礎知識を持つべきだというのが持論。
「被爆国の国民だからこそ、『正しく』怖がってほしい」

62歳。
定年まで1年を切ったが、退官後は放射線を使った
新たながん治療の研究を計画中。
趣味の海釣りに打ち込む時間は、当分なさそう。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/5/12/120113/

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