(毎日 4月26日)
いきなりゴミの話で失礼します。
大学で調理実習の授業をしていて、驚いたことが。
生ゴミに触れない学生がいる。
授業の終わりにゴミを捨てるように指示すると、
プラスチック容器は捨てるのに、生ゴミの方は触ろうとしない。
そういう学生は、たいてい料理をしたことがないか、
料理には自信がないという。
なぜだろうと考えてみた。
自分で料理をする学生は、食材がゴミになる過程を知っている。
じゃがいもの皮、大根の葉の根元、きのこの石突き……。
どれもが食べ物の一部だとわかっているし、
料理の途中で自分で触っている。
それが生ゴミになったところで、触ることには抵抗はない。
料理をしない学生は、ゴミになる過程を知らないから、
ゴミは単なる「汚物」にしか思えない。
だから、触りたくないのだろう。
食べ物から出るゴミが、汚物にしか見えないとしたら、
それは悲しいこと。
自分が食べているものを軽視していると思う。
さらに心配なのは、生ゴミを嫌がるあまり、
ゴミが出るから料理をしたくない、と思ってしまうこと。
本末転倒というか何というか。
合宿所で暮らすアスリートの多くは、自分の部屋だけではなく、
玄関やトイレなどの共用スペースの掃除もする。
つまり、自分の行いに始末をつけるということ。
食べ物を食べて生きていくのだから、食べたものから出るゴミを
始末することは当然のことなのだ。
学生の仕草を見て、調理実習は、食べ物を作ることを教えるのは
もちろんだが、ゴミの意味も感じられるようにしないといけない。
きちんと食べれば、出る生ゴミの量は減る。
生ゴミには触りたくないけど、おいしいものは食べたい、
なんていう甘い考えこそ、捨てさせなければならない。
【海老久美子・立命館大学スポーツ健康科学部教授】
http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2010/04/26/20100426dde035050066000c.html
0 件のコメント:
コメントを投稿