2010年5月21日金曜日

エビさんの食べるスポーツ:捨てるべきもの=海老久美子

(毎日 4月26日)

いきなりゴミの話で失礼します。
大学で調理実習の授業をしていて、驚いたことが。
生ゴミに触れない学生がいる。
授業の終わりにゴミを捨てるように指示すると、
プラスチック容器は捨てるのに、生ゴミの方は触ろうとしない。
そういう学生は、たいてい料理をしたことがないか、
料理には自信がないという。
なぜだろうと考えてみた。

自分で料理をする学生は、食材がゴミになる過程を知っている。
じゃがいもの皮、大根の葉の根元、きのこの石突き……。
どれもが食べ物の一部だとわかっているし、
料理の途中で自分で触っている。
それが生ゴミになったところで、触ることには抵抗はない。

料理をしない学生は、ゴミになる過程を知らないから、
ゴミは単なる「汚物」にしか思えない。
だから、触りたくないのだろう。

食べ物から出るゴミが、汚物にしか見えないとしたら、
それは悲しいこと。
自分が食べているものを軽視していると思う。

さらに心配なのは、生ゴミを嫌がるあまり、
ゴミが出るから料理をしたくない、と思ってしまうこと。
本末転倒というか何というか。

合宿所で暮らすアスリートの多くは、自分の部屋だけではなく、
玄関やトイレなどの共用スペースの掃除もする。
つまり、自分の行いに始末をつけるということ。
食べ物を食べて生きていくのだから、食べたものから出るゴミを
始末することは当然のことなのだ。

学生の仕草を見て、調理実習は、食べ物を作ることを教えるのは
もちろんだが、ゴミの意味も感じられるようにしないといけない。
きちんと食べれば、出る生ゴミの量は減る。

生ゴミには触りたくないけど、おいしいものは食べたい、
なんていう甘い考えこそ、捨てさせなければならない。

【海老久美子・立命館大学スポーツ健康科学部教授】

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2010/04/26/20100426dde035050066000c.html

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