2010年5月19日水曜日

スポーツ政策を考える:高橋明・大阪市障害者スポーツセンタースポーツ振興部次長

(毎日 5月1日)

障害がある人は今、日本に約724万人。
高齢化社会に伴い、年々増えていて18人に1人が障害者。

大阪市長居障害者スポーツセンターは、1974年5月、
日本で初めて障害のある人を対象にしたスポーツセンターとして開設。
障害者手帳を提示するだけで、自由にスポーツが楽しめるように
なっていて、利用者は年間延べ35万人(2009年度)。

日本は、学校を卒業した後もスポーツを続ける環境が乏しい。
障害のあるなしにかかわらず、思い立った時に、
すぐスポーツができる施設が身近にないことが一因、大きな課題。
障害のある人がいつ、1人で来ても、指導者や仲間がいて、
用具も貸してくれるという、長居のような施設はモデルケースに。

一般のスポーツは文部科学省、障害者のスポーツは
リハビリテーションの延長として始まり厚生労働省と管轄が分かれ、
壁になっているのも事実。
障害者が、生活の中で楽しむスポーツを振興していくため、
国の施策として、身近な地域で「いつでも、どこでも、誰でも、
いつまでも」スポーツを楽しめる環境作りが必要。

障害者のスポーツは、障害があっても活用できる能力を生かして
プレーできるように考案されたスポーツ、
その場その場に適した形にしたスポーツということから、
adapt(適応させる)という言葉を使い、アダプテッドスポーツ

誰でもスポーツをする権利があり、ちょっとした工夫で、
高齢者も子どもも同じスポーツを楽しめる。
それが、みんなのスポーツにつながっていく。
子どもから高齢者まで、障害者も含めた同じスポーツとしての
施策が求められ、統括組織としてスポーツ庁が必要。

障害者のスポーツは、まず見ることが大切だと言い続けている。
2003年から、大阪市で車いすバスケットボールの
国際親善大会が開催、毎年1万人を超える子どもたちが見に来る。
たくさんの作文が寄せられ、「すごい迫力」、「かっこいい」、
「障害者へのイメージが変わった」など、さまざまな感想。
子どもたちは、障害のある人にも可能性があることを知り、
理解を深めている。

若い人たちは3K、きつい、汚い、危険ということで、
スポーツを敬遠しがちだが、障害者のスポーツを通じて
感動、感謝、共育の3Kに変えていきたい。

障害者のスポーツを見て感動する、スポーツができる
自分の体に感謝する、障害のある人もない人も共に生き、育つ。
それが、障害者のスポーツの理念だ。
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◇たかはし・あきら

1951年生まれ。NPO法人アダプテッドスポーツ・サポートセンター理事長。
著書に「障害者とスポーツ」(岩波新書)など。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2010/05/01/20100501dde035070033000c.html

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