2008年11月15日土曜日

授業を変える(4)点数評価制で教員発奮

(読売 11月7日)

昇給につながる教員評価が、授業の工夫を促す。

高知工科大学の名物教員2人が10月末、授業をしていた。
「流体力学」の授業は、蝶野成臣教授(52)。
「プールに放り込まれたノミの気持ちになって」。
得意のたとえ話に、約70人の学生が笑い声をあげる。
人間が受ける空気や水の抵抗を、小さな模型で再現するには、
どんな条件付けが必要かを考えさせる。
専門用語を使わず、身近な例で説明するため、
綿密な授業台本も作っている。

「専門教育ガイダンス」の授業は、篠森敬三教授(45)。
1年生約100人に、「学べば必ず未来がある」、
「未来のための勉強だ」と繰り返す。
一部上場企業で、大きなプロジェクトを任されている卒業生たちを引き合いに、
目の前の学びがどう社会で役立つかを具体的に示す。
話に吸い込まれるように、学生は熱心にノートを取っていた。

2人には、学生の授業評価で高く評価され、
大学に表彰されたという共通点がある。

2人の原動力となったのは、同大独自の教員評価。
導入は5年前。
発案者の岡村甫前学長(70)は、「学生を育てるには、成果を出す教員を
客観的に評価、支援する制度が不可欠と考えた」

教育・研究・地域貢献などの分野ごとに、質と量から得点を定め、
独特の計算方法で評価をはじき出す。
授業を一つ担当すると、100点。
そこに、科目別の点数、単位数、学生の授業評価の平均点などの要素が加わる。
研究面では、ネイチャーなど著名な英文雑誌に論文を発表すると300点、
国内誌なら部数によって100~200点、
地域貢献にかかわる委員を務めると5~20点。
すべて大学のホームページで公開。

3年平均で、教授は1100点、准教授は900点取らなければならない。
平均を100点上回ると50万円昇給で、100点下回ると50万円の降給。
大半の教員は5年の任期制で、5年連続して下回ると契約を更新できない仕組み。
すでに教授職で年250万円の差が生まれたが、教員の大半は支持。
点数と数式が明示され、上司との相性を気にする必要がない上、
教育・研究・地域貢献のどこに軸足を置くかは自分次第。

「結果的には、自然に教育力が上がった」と篠森さんは明かす。
学生が力をつけないまま進級すると、関連科目の担当者も困り、
「どんな授業をしていたのか」と教員会議で問題にする。
苦情を受けた教員は授業を改善するか、担当をやめるかの選択を迫られる。
担当が不在になった授業は、教員が奪い合う。

県などの支援を受け、私立大として開学した同大は、
来年度から公立大学法人によって経営。
開学12年目で力をつけた大学は、新たな一歩を踏み出そうとしている。

◆公立大学法人

地域活性化などを目指し、5年前にできた地方独立行政法人法で始まった制度。
自治体の裁量で、弾力的な組織運営や教育、研究を展開できる。
全国で37大学が公立大学法人化しているが、
私大が公立大学法人化されるのは異例。
国から同大に出ている助成金の2倍の交付税措置が受けられ、
年間約124万円の授業料は半額以下に抑えられる見込み。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081107-OYT8T00215.htm

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