(読売 11月6日)
教員同士の簡便な授業参観の仕組みを作った大学がある。
学生が約220人もいる大教室だが、私語は少ない。
流通科学大学(神戸市)サービス産業学部での授業「流通科学入門」。
横山斉理講師(31)は、空欄を設けた手作りの資料に書き込みをさせ、
「メモして」、「そこは試験に出すよ、テキストに線引いて」と指示を出す。
90分の授業中、教室内を歩き続け、「君はどう考える?」と学生に問いかける。
座席は、学籍番号順の指定席。名前も分かる。
居眠りを始める学生がいると、「この辺の睡眠率は高いね。
僕が来る回数が少ないからかな」と笑わせ、眠気を吹き飛ばそうと努める。
神戸大大学院を修了、昨年4月に着任したばかり。
授業の工夫を、「ほかの先生の見よう見まね」と打ち明ける。
流通科学大が、前後期に3週間ずつ行う教員同士の授業参観で、
先輩たちのやり方を見て、居眠りや私語、遅刻への対処法を身につけた。
教員が、互いの授業を見学し合う授業参観を取り入れている大学は
少なくないが、実を挙げるのは難しい。
流通科学大でも、始めたのは8年前だが、
その後3年間に公開されたのは15授業、参観者も数人程度にすぎなかった。
5年前、約1000の授業すべてを3週間、公開するよう教員に義務づけた。
「学生にやる気を出させ、退学者を減らすには、
教員が、授業を通して悩みと知恵を共有することが急務と考えた」と
義務化の推進役、教育高度化推進センター長の南木睦彦教授(52)は説明。
南木さん自身、20年前の開学時に着任して以来、
同僚に授業を見てもらったり、学生に授業アンケートをしたり、
独自の努力を重ねていた。
塾講師や高校教員の経験もあり、
「学生の力を伸ばすには、教員自身の学びが大切」と実感。
授業公開義務化の翌年には、学内ウェブサイト上に、授業の日程だけでなく、
どのような工夫をしているかも事前に調べることができるページを開設。
例えば「私語」をキーワードに検索すれば、
私語対策で工夫をしている授業が探せて、
その中から都合の良い授業を選び、参観を申し込むことができる。
さらに、参観後の意見交換もウェブ上で閲覧できる。
悩み解決への“近道”が具体的に示されたことが教員を動かしたのか、
この5年で参観者数は1400人超。
低迷していた学生の授業満足度は、5点満点で4点前後と、
1ポイント近く上昇、理解度は今年度前期、初めて4点を超えた。
1年生の退学者も、昨年度は21人と5年前から半減。
今春、他大学でも使えるソフトを大学で開発、
すでに他大学からの視察や問い合わせが相次いでいる。
「大学の壁を越え、一緒に学生を育てていきたい」と南木さん。
流通業界の風雲児と呼ばれた故中内功氏が生んだ同大。
教育への熱い思いを、独自の方法で発信し始めている。
◆授業参観「有効に機能」3割
読売新聞「大学の実力 教育力向上への取り組み」調査で、
実施している大学は499大学中290大学、58%に上ったが、
「有効に機能している」は30%、「他大学の模範となるレベル」は2%に過ぎない。
時間の確保が難しいことや、互いの授業に踏み込まないという、
従来の教員気質が根強いことが背景にあると指摘。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081106-OYT8T00200.htm
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