(読売 12月3日)
入学前の子供を持つ保護者の発言が、学校の常識を変えた。
きっかけは雑談だった。
「1年生の給食、始まるのが遅いですよね」
長男を東京都世田谷区立城山小学校に、
次男を地元の幼稚園に通わせる川上一美さん(40)がこんな発言をしたのは、
同小が、区内最初のコミュニティスクールの一つとして指定された
3年前の6月の学校運営委員会の場。
コミュニティスクールは、地域住民らが運営に参画することを
法律に規定した学校。
その協議機関は、法律では学校運営協議会だが、
世田谷区では学校運営委員会と呼ぶ。
川上さんの発言は、「幼稚園では、昼に弁当を食べて午後も園で過ごすのに、
1年生の給食が始まるのは、1週間も2週間もたってからなのはなぜ?」
という素朴な疑問から出発。
入学当初の1年生が、学校生活に慣れていないのは確か。
給食の配膳も手際よくできない。
だから、午前中だけで帰宅させる。これが従来の学校の常識だった。
「ふつうなら聞き流していたかもしれない。
指定を受けて何ができるか、考えていたから」と校長の渡辺克元さん(56)。
翌年2月の入学予定者説明会で、渡辺校長が
「入学式の翌日から、新1年生の給食を始めます」と宣言すると、
保護者から拍手がわいた。
その代わり、1年生が落ち着くまで、保護者にお世話係として来校してほしいと依頼。
その結果、児童70人の保護者の半数以上が、
交代で給食時に学校を訪ねることに。
その後の保護者アンケートには、
「友達と話している子供の様子を見ることができて安心した」、
「親同士がすぐに親しくなれてよかった」、
「帰宅してから給食の話をたくさんしてくれてうれしかった」
といった感謝の言葉が並んだ。
学校にも、授業時間が余分に取れる利点が生まれた。
「以前なら、授業時間が多過ぎるのはよくないと言われたかも…」(渡辺校長)。
入学式の翌日からの給食が、その後も続いていることは言うまでもない。
世田谷区のコミュニティスクールでは小学校なら、
その小学校に入学予定の子供の保護者、
中学校ならその中学校に入学予定の小学生の保護者を、
学校運営協議会の委員に入れる規定がある。
各小学校は、近隣の幼稚園や保育園との関係を密にする必要が出てくる。
長男や長女が小学校に在学していて、園児もいる保護者が声をかけやすい。
ただ、任期の2年間続けてもらうには、
幼稚園や保育園の年少組の段階で依頼する必要があり、
候補者探しは容易ではない。
だが、この取り組みは副産物を生んだ。
委員を通して、学校の正確な情報やいい評判が、幼稚園の保護者に伝わる。
委員から、「もっと園児が学校を訪問する機会を作ってほしい」
といった提案も気軽にできる。
入学前の子供の保護者委員を入れる規定は、
一石二鳥以上の効果をもたらしているようだ。
◆学校運営協議会の委員
地域や保護者の代表、教職員のほか、公募委員が加わる場合も。
世田谷区では、卒業生を入れる規定もある。
佐藤晴雄・日大教授が昨秋に実施した調査では、
回答した185校の委員数は11人~15人が6割と最多。
会長など代表者を務めるのは、7割が地域代表。
開催頻度は年3、4回45%、月1回29%、隔月程度23%。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081203-OYT8T00244.htm
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