(毎日 2月7日)
「ボクは武士道フリークや!」(小学館)は痛快な一冊。
交換留学生として日本に来たニュージーランドの高校生が、
剣道を始めたのを契機に武道にとりつかれ、
カンタベリー大学を卒業後、京大大学院に留学して
「実践系武道学者」に成長していくまでの物語を、
ユーモアたっぷり、関西弁でつづっている。
著者は武道社会学、武道人類学を提唱するアレキサンダー・ベネットさん(39)、
日本人の妻と京都府宇治市内で暮らしている。
近年の海外での武道熱の高まりに反して、日本人の武道離れを感じている。
課題の一つとして、日本の伝統文化としての武道に対する評価の低さ。
「武道をやっている人と、やっていない人の意識のギャップが大きい。
『武道は特別で、他のスポーツとは違う』と言いながら、
なぜ違うのか武道家は説明できていない」とベネットさん。
研究論文も、スポーツ科学的なアプローチがほとんどで、
武道の社会的、文化的価値の探求が十分でないのも一因。
複数の大学で講師を務める傍ら、ベネットさんは防具を使わない
剣道の指導法を推奨。
基本技を習得するために、用意するのは木刀だけ。
当たれば痛いので、安全性に配慮してルールは寸止め。
打つ方も打たれる方も、最初は怖くて仕方がない。
そこに緊張感が生まれ、打つ方は相手を傷つけないように気を配り、
打たれる方は相手を信じて身を任す。
それが礼だということを、学生は自然に気付いていく。
武道について、ベネットさんは「残心こそが命」。
技が決まっても、相手から目線を切ってガッツポーズをしない。
武道のルーツは真剣勝負であり、生きるか死ぬかの世界。
技が決まっても決まらなくても(審判が一本と認めても認めなくても)、
次の攻撃や相手の反撃に備える。
ベネットさんは書いている。
「残心とは、平たく言えば『決して油断しない』ということ」。
日常生活にも、あてはまる教訓だ。
http://mainichi.jp/enta/sports/21century/
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