(毎日 2月14日)
2016年の夏季五輪招致を目指す東京の「立候補ファイル」が
国際オリンピック委員会(IOC)に提出。
開催都市は10月に決まるが、東京には三つのハードル。
国会の招致決議の見送り、盛り上がらないムード、
オバマ米大統領の地元シカゴがひときわ存在感を放つ。
64年以来、約半世紀ぶりの開催を狙う東京の招致レースの行方を探った。
東京都の石原慎太郎知事は、「国民の7割が支持してるのに、
民主党が反対なんですか。はっきりしてもらいたいねえ」
表情は険しく、昨年6月のIOCの1次選考でトップ評価で通過した余裕はない。
東京都議会の民主は、都議選を控えた今年、都議団の田中良幹事長らが
党本部に国会決議に慎重な態度を求めた。
猪瀬直樹副知事が、民主党の鳩山由紀夫幹事長に決議を求めたが、
「都の情熱をまるで感じない」
五輪の開催費が巨額となり、最近の招致レースでは
政府の財政保証が大きなポイント。
12年五輪は、英国のブレア首相(当時)がIOC総会でロビー活動を展開、
政府の支援をアピール。
日本では、五輪やサッカーのワールドカップ(W杯)で
政府が財政保証した例はない。
東京五輪招致委員会は、政府が財政保証することを明確にした
国会の招致決議を実現して立候補ファイルに盛り込もうとしたが、
民主党が決議に応じなかった。
政府は、決議なしで麻生太郎首相のサイン入り財政保証書を発行。
ファイルには、資金不足に陥った場合の補てんについて、
「日本国政府及び東京都知事が、別添の通り、保証している」と記載。
保証内容などを記しているとみられる別添文書は、公表されなかった。
招致委の河野一郎事務総長は、
「当事者間の合意がない限り、公表できないと聞いている」
国会決議なしの財政保証には、法的な問題も指摘。
憲法85条には、「国費を支出し、又は国が債務を負担するには、
国会の議決に基くことを必要とする」
日本オリンピック委員会の幹部は、
「(決議なしの財政保証は)フライングではないか。新たな問題の火種に」
東京都の谷川健次副知事は、「国民、都民の熱意をひしひしと感じる」と強調。
先月、招致委が行ったインターネット調査では、
支持率が全国で70・2%(都内68・6%)と前回を上回った。
昨年6月公表のIOCの独自調査では、都民の支持率は59%。
当時、開催候補の4都市で最低。
危機感を募らせた招致委は、競泳の北島康介選手を
「五輪招致応援党首」として、イベントを積極的に仕掛けた。
招致活動費は、06年9月から今年10月まで都と招致委で計150億円。
国内世論の盛り上がりは、IOC委員に分かりやすい指標となるため、
さまざまな世論喚起を計画。
都内62の区市町村には、上限1000万円を助成、
3月末までに共同で126の招致活動を予定。
スポーツ選手のトークイベントや五輪の落語などで、
09年度も今年度と同額の6億2000万円を予定。
大盤振る舞いの招致活動に、都議会の後藤雄一議員は
「一種のばらまき。都民から招致機運が盛り上がっているかは疑問だ」
オバマ米大統領の就任は、シカゴの「追い風」に。
大統領選直後の昨年11月、オバマ氏は欧州オリンピック委員会総会に
ビデオメッセージを送り、「五輪は、人類を結びつけることが可能と
思い起こさせる祝祭だ。私は地元シカゴをずっと支援してきた」
最近の五輪開催地決定では、国家のトップがIOC総会に出席するのが通例。
IOCは、開催地が決まる今年10月まで、14年ロシア・ソチ冬季五輪と
16年夏季五輪の米国向けテレビ放映権の交渉開始を遅らせている。
米NBCが持つ10年冬と12年夏の五輪放映権料は、
計約22億ドル(約1980億円)。
IOCにとって、「ドル箱」の米放送局の意向が委員の投票を左右するとの見方。
夏季五輪の開催地を地域別で見た場合も、08年がアジア(北京)、
12年が欧州(ロンドン)で、米国は96年アトランタ以降開催がない。
米国は世界同時不況の「震源地」でもあり、財政を不安視する声も根強い。
http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/02/14/20090214ddm003050054000c.html
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