2009年2月24日火曜日

クローズアップ2009:16年招致活動 東京五輪、三つの壁

(毎日 2月14日)

2016年の夏季五輪招致を目指す東京の「立候補ファイル」が
国際オリンピック委員会(IOC)に提出。

開催都市は10月に決まるが、東京には三つのハードル。
国会の招致決議の見送り、盛り上がらないムード、
オバマ米大統領の地元シカゴがひときわ存在感を放つ。
64年以来、約半世紀ぶりの開催を狙う東京の招致レースの行方を探った。

東京都の石原慎太郎知事は、「国民の7割が支持してるのに、
民主党が反対なんですか。はっきりしてもらいたいねえ」
表情は険しく、昨年6月のIOCの1次選考でトップ評価で通過した余裕はない。

東京都議会の民主は、都議選を控えた今年、都議団の田中良幹事長らが
党本部に国会決議に慎重な態度を求めた。
猪瀬直樹副知事が、民主党の鳩山由紀夫幹事長に決議を求めたが、
「都の情熱をまるで感じない」

五輪の開催費が巨額となり、最近の招致レースでは
政府の財政保証が大きなポイント。
12年五輪は、英国のブレア首相(当時)がIOC総会でロビー活動を展開、
政府の支援をアピール。

日本では、五輪やサッカーのワールドカップ(W杯)で
政府が財政保証した例はない。
東京五輪招致委員会は、政府が財政保証することを明確にした
国会の招致決議を実現して立候補ファイルに盛り込もうとしたが、
民主党が決議に応じなかった。
政府は、決議なしで麻生太郎首相のサイン入り財政保証書を発行。

ファイルには、資金不足に陥った場合の補てんについて、
「日本国政府及び東京都知事が、別添の通り、保証している」と記載。
保証内容などを記しているとみられる別添文書は、公表されなかった。
招致委の河野一郎事務総長は、
「当事者間の合意がない限り、公表できないと聞いている」

国会決議なしの財政保証には、法的な問題も指摘。
憲法85条には、「国費を支出し、又は国が債務を負担するには、
国会の議決に基くことを必要とする」
日本オリンピック委員会の幹部は、
「(決議なしの財政保証は)フライングではないか。新たな問題の火種に」

東京都の谷川健次副知事は、「国民、都民の熱意をひしひしと感じる」と強調。
先月、招致委が行ったインターネット調査では、
支持率が全国で70・2%(都内68・6%)と前回を上回った。

昨年6月公表のIOCの独自調査では、都民の支持率は59%。
当時、開催候補の4都市で最低。

危機感を募らせた招致委は、競泳の北島康介選手を
「五輪招致応援党首」として、イベントを積極的に仕掛けた。
招致活動費は、06年9月から今年10月まで都と招致委で計150億円。
国内世論の盛り上がりは、IOC委員に分かりやすい指標となるため、
さまざまな世論喚起を計画。

都内62の区市町村には、上限1000万円を助成、
3月末までに共同で126の招致活動を予定。
スポーツ選手のトークイベントや五輪の落語などで、
09年度も今年度と同額の6億2000万円を予定。
大盤振る舞いの招致活動に、都議会の後藤雄一議員は
「一種のばらまき。都民から招致機運が盛り上がっているかは疑問だ」

オバマ米大統領の就任は、シカゴの「追い風」に。
大統領選直後の昨年11月、オバマ氏は欧州オリンピック委員会総会に
ビデオメッセージを送り、「五輪は、人類を結びつけることが可能と
思い起こさせる祝祭だ。私は地元シカゴをずっと支援してきた」

最近の五輪開催地決定では、国家のトップがIOC総会に出席するのが通例。
IOCは、開催地が決まる今年10月まで、14年ロシア・ソチ冬季五輪と
16年夏季五輪の米国向けテレビ放映権の交渉開始を遅らせている。

米NBCが持つ10年冬と12年夏の五輪放映権料は、
計約22億ドル(約1980億円)。
IOCにとって、「ドル箱」の米放送局の意向が委員の投票を左右するとの見方。

夏季五輪の開催地を地域別で見た場合も、08年がアジア(北京)、
12年が欧州(ロンドン)で、米国は96年アトランタ以降開催がない。
米国は世界同時不況の「震源地」でもあり、財政を不安視する声も根強い。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/02/14/20090214ddm003050054000c.html

0 件のコメント: