(日経 2月18日)
部下を鼓舞してやる気を引き出すことは、いつの時代でも上司の重要な課題。
「オレの背中を見ろ」という旧来型のスタイルはもう通用しない。
組織の活性化策を企業に授けているトーマツイノベーション社長の
白潟敏朗さんは、「認関肯称」をキーワード。
このキーワードは、認知、関心、肯定、称賛の頭文字をとったもの。
それぞれにどのような意味が込められているのだろうか?
◆「認知」…話しかける習慣、「関心」…調子を聞く一手
まず、認知と関心。これは、部下の名前を呼ぶことでできる。
「○○さん、おはよう」、「○○君、最近どう?」
簡単ではあるが、普段できている人は少ない。
「部下は、自分が認知され関心を持たれていることを知って安心する」
◆「肯定」…まず「なるほど」
肯定とは、否定をしないこと。
違うなどと言って話を遮らないことが重要。
「なるほど」、「おっしゃるとおり」といった相づちは部下をリラックスさせる。
どう見ても部下が言っていることが間違っていたら、
「なるほど。その心は?」と問うのがよい。
部下が自分の考えを整理し、自ら誤りに気づくのを待つ。
◆「称賛」…第三者の言葉で
最も難しいのが、最後の称賛だ。
日本人は、面と向かって相手を褒めることに慣れていない。
ましてや上司部下の関係だとなおさらだ。
「いいねー」、「やるじゃん」、「さすが!」といったワンフレーズなら照れくさくないし、
次第に口癖となって会話の潤滑油となる。
「部長が君を褒めてたよ」とか、「みんな○○君を頼ってるよ」など、
第三者の言葉として伝えると効果が倍増。
会話以外に、称賛の言葉を「流通」させるのも効果がある。
「普段目につかないような所まで掃除してくれて、いつも感心しています」、
「外国人の案内で困っているとき、英語で案内を作ってくれて本当に助かりました」
自動車学校や整備工場などを展開するユタカコーポレーション(豊橋市)は、
「やるじゃん」カード制度を採り入れている。
名刺大のカードに感謝の気持ちを書き、投票箱を通じて本人に伝える仕組み。
同社管理部課長補佐の磯村英也さんは、「全社で400通ほど流通している」
同社の従業員数は255人だから、1人が月に2枚近く書いている計算。
磯村さんも、折に触れて部下をねぎらう文章を書いている。
システム開発のキャパ(東京)は、メールを使って部下を積極的に褒める
「おほメール」運動を始めている。
「いやー、○○さんがいないとプロジェクトがうまく進まないよ」、
「君のおかげで、トラブルもうまく解決できた」などと褒める活動。
「効果はかなりある」とソリューション&プロダクトサービス部長の古株健さん。
部下に仕事を手伝ってもらうよう頼んだとき、
これまでは「忙しいんですが」と後ろ向きの反応が多かったが、
最近は積極的に引き受ける部下が増えている。
◆「褒めるミスマッチ」注意 良好な関係が大切
部下をむやみに褒めても、やる気を引き出せるわけではない。
ポイントを外したり、良好な人間関係を築けていなかったりすれば、
逆効果になるというから難しい。
西日本旅客鉄道(JR西日本)の安全研究所が、
「効果的な褒め方・しかり方に関する研究」というリポートをまとめた。
京阪神地区で勤務する運転士と、運転士の上司である係長の
合計530人に聞き取りした結果。
リポートが着目した第1点は、「褒めのミスマッチ」。
運転士が褒めてもらいたいと思っている点を、
係長が必ずしも褒めているわけではなかった。
このミスマッチが大きいほど、上司の部下への評価は低くなり、
部下のやる気も失われる傾向がみられる。
組織全体の業績にも悪影響を及ぼす。
第2のポイントは、部下と上司が良好な関係にあるかどうか。
リポートは、ある実験結果を紹介。
面識のない人同士で、上司と部下のロールプレイングをしてもらったところ、
部下が評価してほしい点を、上司役の人が褒めたとしても、
部下のやる気は上がらなかった。
上司と部下が互いに気まずく思っている場合、
褒めの効果はあまり期待できそうにないことを示している。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090218.html
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