2009年2月26日木曜日

国際協力と政策への関心強める米科学界

(サイエンスポータル 2009年2月19日)

米科学振興協会(AAAS)の年次総会は、
米国内の科学技術関係者が集まるだけでなく、国際交流の場、
科学を政策に活かす道を探る場としての性格を強めているようだ。

AAAS国際部からの招きで参加した
有本建男・科学技術振興機構社会技術研究開発センター長から
送られてきた報告から伺える。

科学誌「サイエンス」の発行元でもあるAAASの年次総会は、
シカゴで行われた。参加者は1万人。
基礎科学から教育、科学技術政策にわたる数多くのセッションが
設けられているのは、昔と変わらないようだが、
科学の国際協力に関するセッションが人気を集めていた。

有本氏が新しい科学技術政策のありかたを報告したのは、
「科学技術政策と変化する世界経済」というセッション。

パネリストは、欧州連合(EU)研究総局長と全米科学アカデミー国際局長、
AAAS国際部長兼科学外交センター長という顔ぶれ。
科学外交センターは、AAASに設置されたばかりの組織で、
国際部長を兼ねる科学外交センター長は国務省出身者。
この人物によって、セッション「科学技術政策と変化する世界経済」が企画、
その他、国際協力関係のセッションも増えた。

「東アジアの科学政策と新たなグローバル実態」は、
日本の科学技術政策研究所が幹事、中国と韓国が参加したセッション。
「外交のための科学:北朝鮮との科学協力構築」というセッションは、
AAASとシラキューズ大学、ニューヨーク・コリア協会、NGOの4者が協力して
北朝鮮との非軍事の科学・教育協力を企画、
ピーター・アグレ次期AAAS会長(2003年のノーベル化学賞受賞者)の主導。

「科学の国際化:未来を見る」、「外交の新しいツール:環境変化、保護、対立」、
英王立協会長とハンガリー・アカデミー会長による
国際科学協力に関するレクチャーなどが設けられた。

マカーシー新AAAS会長の就任演説は、地球温暖化問題に
多くの時間を割くとともに、オバマ政権への大きな期待を示す。
今年は、リンカーン大統領の生誕200年に当たる。
ダーウィンの生誕200年、「種の起源」出版150周年にも当たり、
総会テーマ「われわれの惑星とその生命 -起源と将来」が設定。

マカーシー会長は、オバマ大統領がリンカーン大統領と同様な
国家の非常事態に直面、リンカーン大統領が特許の取得や農業技術を振興、
科学アカデミーの創立、大学のために用地を無償で払い下げる制度を確立、
科学を尊重したことをたたえた。

いま、科学に対する政治的なリーダーシップが必要であること、
オバマ大統領が科学界から有能な人材を新政権の要職に登用したこと、
科学の情報と知識を大統領が活用してくれることに、大きな期待を表明。

大統領への科学的助言、議会への科学的助言、新政権の科学技術政策、
科学と政策決定との連結といった、科学と政策を結びつけるテーマのセッションも、
それぞれ多くの参加者を集め、オバマ新政権への期待の大きさ。

科学者の社会的貢献について、ゴア元副大統領も招待講演の中で触れ、
「科学と社会との間には距離がある。公共サービス部分(新政権内)に行った
科学者たちとの間に距離はできるが、彼らとのコミュニケーションを維持してほしい」
と科学者たちに要請。

来年2月、サンディエゴで開かれる次のAAAS年次総会のテーマは
「Bridging Science and Society(科学と社会を架橋する)」
ことしは、「科学は社会のために役立たなければならない」というブダペスト宣言が、
世界科学会議で採択されて10年目。
「社会のための科学」を追求し、政策の中に科学の力を活かそうとする。
そんな動きが、今後、米国で活発化するのではないか。

http://www.scienceportal.jp/news/review/0902/0902191.html

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