(日経 2009-10-28)
回復傾向が続いたアジアの鉄鋼市況に、陰りが見え始めた。
震源地は中国。
市況回復をけん引してきた同国では、供給過剰を受け、
韓国や東南アジアへの安値輸出が目立ってきた。
中国の変調をみた韓国の需要家も、様子見姿勢を強め、
日本の輸出にも影響が広がりそう。
需要の回復力が弱いなか、中韓の鉄鋼増産が進めば、
日韓中の取引関係は大きく変わる。
「昨日の客は明日の敵……」
アジア市況の変調は、日韓中が生き残りを争う
「鉄鋼三国志」の予兆にみえる。
電炉最大手の東京製鉄は、8月に再開したH形鋼の
韓国向け輸出を9月から凍結。
1トン650ドル前後だった輸出価格が、500ドル台に下落。
「1ドル=90円前後では、採算に合わない」(大堀直人常務)。
同社は、今年度下期の鋼材輸出をゼロと想定。
新日本製鉄など、高炉もH形鋼の輸出価格を、
600ドル台後半から600ドル台前半に下方修正。
自動車や家電に使う薄鋼板の母材となる熱延コイル。
新日本製鉄などの高炉は、韓国向けの7~9月積みで
500ドル強だった輸出価格を、10~12月積みで600ドル台に
引き上げる計画。
韓国の鋼板加工業者は抵抗、着地点は500ドル台半ばに落ち着く。
背景には、中国の安値提示がある。
中国メーカーは、10月上旬の国慶節(建国記念日)休暇を挟み、
韓国などH形鋼や熱延コイルで500ドルを下回る輸出価格を提示。
品質の格差を差し引いても、日本メーカーの提示価格との差は大きく、
韓国企業の買い意欲は急速に後退。
アジアの鉄鋼市況は、中国→韓国→日本という循環で
回復基調が続いた。
政府の景気刺激策をテコに、中国で自動車や建設の内需が拡大。
韓国から中国への薄鋼板輸出が伸び、日本から韓国向けに
母材となる熱延コイルの輸出が伸びる、といった流れ。
中国の輸出低迷をよそに、日本と韓国は輸出増の恩恵。
中国では、8~9月から需要の伸びを上回る増産で、
供給過剰と相場下落が鮮明、現地企業が輸出意欲を強めた。
熱延コイルの現地価格は、国慶節休暇が終わってからも
下落基調が続いている。
中央政府は、投資抑制策を打ち出したものの、
中小メーカーの生産意欲は旺盛で、効果は未知数。
JFEスチールの役員は、「来年は、今年以上に大変な年に。
特に厚鋼板は心配」
中国だけでなく、韓国では電炉最大手の現代製鉄が、
来年に大型高炉を立ち上げる。
ポスコや東国製鋼も、厚板設備を増強。
年間800~1000万トン台で推移していた日本の韓国向け
鋼材輸出が、今後大きく減少するのは確実。
日本の鉄鋼メーカーは、輸出拡大をテコに減産緩和に
乗り出したが、輸出は各国政府の財政出動に
押し上げられた面が大きいのが現状。
景気対策の効果が息切れした時、余剰生産分をどうするのか?
日中韓メーカーの勢力争いが激しくなる可能性がある。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/shikyou/shi091027.html
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