2009年11月1日日曜日

佐藤元美・藤沢町民病院院長に聞く 岩手・無床化半年 地域医療の行方/5止

(2009年10月24日 毎日新聞社)

無床化は、地域医療の在り方をどうするか、
難しい問題を住民、医師、介護関係者らに投げかけた。
半年経た今、答えは見えず、住民は救急時に
搬送先が見つかるのか不安を抱え、負担を増やしつつ、
医師や福祉関係者が懸命に働く。
処方せんはあるのだろうか?
地域医療を守り、医師育成に取り組んできた
藤沢町民病院の佐藤元美院長兼事業管理者(54)に話を聞いた。

--無床化からの半年間をどのように見ているか?

一律で無床化したのだから、影響が出るのは当然。
地域診療センターなど普通の病気を診る病院が減り、
中核病院への患者の集中が増す。
大病院と個人病院の二極分化を加速。

--背景には、病院ごとの役割分担が理解されていない現状も。

誰でも参加できて、自由に話せる場で訴えないと、
住民には伝わらない。
(県の医療圏別懇談会など)代表者だけを集め、
アリバイづくりのように会議を開いても、時間の無駄。

無床化の際、医療局側の顔が見えなかった。
2~3年ごとに交代し、知事部局に戻る局長では難しい。
医師が最低でも4~5年、局長を務め、
「責任を持って自分がやる」と説明すれば、住民も理解してくれる。

--どうすれば病院の二極分化は防ぐことができるのか?

盛岡にある医療局からのリモートコントロールではうまくいかない。
(地域の病院運営は)利用者に近いところで考えなければならない。
県は、市町村や地元医師会と共同で病院を運営しつつ、
ノウハウを移す。
県は離れて、医師・看護師の確保や県全体の医療を
考える形にしていけば良かった。

--地域に必要な医療をそれぞれ設計するのは難しい。

市町村だからこそ、設計図を作ることができる。
種市(洋野町)や国保まごころ(奥州市)の両病院に、解決のヒント。
地域に必要な魅力ある医療を生み出そうと考えれば、
そういった人材を自分たちで育てようとする。

--どういった人材が必要か?

(幅広い診療科を診る)総合医が必要。
今後、町全体の医療の防波堤となることができる
総合医が求められるのは、誰の目にも明らか。
専門医育成に集中し過ぎた反省から、
(総合医育成の)流れは出てくる。
そうした流れに乗る体制を早く作らなければならない。
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◇さとう・もとみ

55年3月一関市千厩町出身、79年、自治医科大を卒業後、
同年から県立宮古、久慈両病院内科に勤務。
92年、藤沢町福祉医療センター所長に就任。
93年、藤沢町民病院を創設。
診療科にかかわらず、広く地域医療に携わる「総合医」の
育成に取り組み、同病院は常勤6人、非常勤3人、研修医1人
(10月21日現在)を確保。
病床稼働率84・2%(07年度)を維持、経営も安定。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/10/26/109834/

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