(読売 10月27日)
犬や猫が捨てられ、やむなく殺される現実から、
命の大切さが学ばれていく。
「毎週金曜、あのスイッチを押したら、もういないの。
ペットを捨てるとか、命は要らないなんて考えないで。
取り返しがつかないんだよ」
秋田県由利本荘市立亀田小学校で開かれた「命の教室」。
高学年児童約40人を前に、同県動物管理センター(秋田市)の
職員で獣医師の上田かおりさん(39)が語りかけた。
スイッチとは、センターに持ち込まれた犬を、
炭酸ガスで安楽死(窒息死)させる機械の作動ボタンのこと。
1995年から14年連続、自殺率が全国ワースト1の秋田県。
県内の学校を回る同センターの命の教室は、
2006年10月、自殺防止対策の一環として始まった。
加沢敏明・同センター所長(56)は、
「殺処分せざるをえない実態と職員の思いを知らせ、
命を大切にする心を学んでもらいたい」と狙いを説明。
同センターでは昨年度、犬541頭と猫1378頭が、
炭酸ガスや薬物で処分。
教室では、処分の状況や新しい飼い主に引き取られる経過を
映像で紹介。
人間やウサギ、犬の心音を聴き比べ、ボランティアが連れてきた
飼い犬たちとふれあった。
参加した5年生の山崎佑弥君(11)は、
「家で犬を飼っているけれど、絶対捨てない」
「(犬の心音を聴いて)命ってこういう音なのか」(小2女子)、
「5年の時、いじめられて死のうと思ったけど、今日話を聞いて、
あの時死ななくてよかったと思う」(小6男子)、
「小学校の時にいじめをしていたけど後悔した」(中1女子)
などの感想が寄せられている。
「犬や猫は、きちんと飼えば15~16年は生きる。
私たちは、その命を救おうと挑戦しているの」
NPO法人アニマルレフュージ関西(ARK、大阪府能勢町)の
エリザベス・オリバー理事長が、ボランティア学習に訪れていた
大阪インターナショナルスクール(同箕面市)の
6年生児童19人に、自らの思いを語った。
ARKは、捨てられる犬や猫のシェルターとして、
英国人のオリバーさんが1990年に設立。
3000頭以上に、新しい飼い主を見つけてきた。
生活苦や高齢化で、犬猫を手放そうとする飼い主が
順番待ちの状態で、兵庫県内に新施設を作る予定。
同スクールの児童らは、犬の散歩や猫の遊び相手などを体験。
山下由意君(11)は、「お金もないのに、動物たちを助けようという
人たちがこんな施設を作るなんてすごい」
オリバーさんは、「子どもはすぐペットに興味を失いがち。
しつけができていないことも捨て犬の要因に。
最後まで責任を持って」
◆年間約30万頭 映画でも啓発
ペットフード協会の推計によると、国内では約2700万頭の
犬や猫が飼われている。
約34万頭が、動物愛護センターなどに引き取られ、
約30万頭が殺処分。
動物保護管理法施行時の1974年度、約125万頭が引き取られ、
98%が殺処分と比べ、大幅に改善したが、依然として多い。
2006年施行の改正動物愛護管理法では、
ペットの遺棄や虐待に対する罰金が、
30万円以下から50万円以下に引き上げられた。
各地の愛護センターや愛護団体の動きも活発で、
新しい飼い主を探す譲渡会や犬のしつけ教室などが頻繁に開催。
秋田県のような出前授業も各地で行われ、
和歌山県や岐阜県では同じ学校に年に何度も訪れている。
犬猫殺処分の実態を伝えるドキュメンタリー映画
「犬と猫と人間と」(飯田基晴監督)も、全国で順次公開中。
「かわいがったり、食べたり、殺したり。
人間社会に動物を巻き込んだ時点で、人間と動物の関係は矛盾。
それを知った上で、できるだけいい関係を作ろうとしているのが、
現代の私たちだ」と、石田おさむ・ヒトと動物の関係学会会長(63)。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091027-OYT8T00258.htm
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